襲われたジュリエット
「お姫さんは?」
女子高生達に質問攻めにあっていたアントーニョがアーサーがいなくなった事に気付くまでそう長い時間はかからなかった。
ほんの5分といったところだろうか…。
アントーニョは一瞬考えこんだ。
トイレ…とかならいいが…何か行事とか旅行とかだと毎回のように事件が起こっているので、なんとなくそういう消え方をされると怖い。
念のため、と、携帯をかけてみるが留守電。
この時点で即決断を下した。
「あーちゃんが戻ってきたら、ここで待つ様にいっておいてな。」
と、言い置くと部屋の外に飛び出す。
幸い消えた時の服装はジュリエットだ。目立つ。
道行く人に聞くとすぐ屋上方向に向かった事がわかる。
アントーニョはそのまま迷わず階段を駆け上がって屋上へ。
「あーちゃん?」
声をかけて左右を見回したアントーニョの顔から瞬時に血の気が引いた。
一瞬足が凍り付いたように動かない。
「あーちゃん…あーちゃんっ!!!」
しかし次の瞬間、はじかれたようにマリア像の元に横たわるジュリエットの所へと駆け出した。
すぐ側まで来て立ちすくむと、横たわるその華奢な恋人を見下ろす。
肘まで白い手袋に覆われた手を胸の上で組み、静かに目を閉じているアーサーの横に恐る恐るひざまづき、祈る様な気持ちで首筋に手を当て脈拍を確認して、次の瞬間、アントーニョは大きく息を吐き出した。
…生きている。
安堵のあまり全身から力が抜けた。
とりあえず…と、アントーニョはアーサーを抱き上げて校舎内へ戻り、医務室へと連れて行く。
ジュリエットを抱えて校内を歩いているのだから、当然目立ち、エリザとギルベルトも人づてに耳にしたらしくかけつけてきた。
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