ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん【後編】_1

流星祭


待ち合わせは10時正門前。9時に出れば十分間に合う訳だが7時起き。
服を引っ張りだして取替えひっかえしてはため息をつく。


女子校…なんとなく緊張する。

自分があまりオシャレな方ではないと言う自覚はあるし、逆にカッコいいアントーニョはきっと女子高生達の注目の的になるだろう。

しかも…可愛いと評判の女子校の女子高生達……。
比べられたらもう可愛い女子高生に敵うわけがない。


行きたくない…というよりアントーニョを行かせたくない。

…が、ロヴィーノがトラブルに巻込まれているとわかったら行かない、行かせないわけにもいかないだろう。

アーサーはため息をついた。

そこにガチャリとドアが開いて、アントーニョが朝食のトレイを片手に入ってくる。


「なん?もう起きとったん?」
と、トレイをテーブルに置きながら言う声は若干不機嫌なようだ。

「…寝てて欲しかったのか?」

いつもならアントーニョが朝食を運んできてくれるまで寝てたりするので、それかと思って首をかしげると、アントーニョは眉を寄せた。

「普段そうしとるのに、今日は何服とっかえひっかえしとるん?」
手早くその辺りの服を片付け始めるアントーニョに、アーサーも慌てて片付け始める。


「わ、悪い、散らかして。俺が片付けるから」

そっちだったかと焦って言うと、アントーニョはいきなりアーサーの腕を掴んで抱き寄せた。


「と、トーニョ??」
わたわたと慌てるアーサーの唇を強引に塞ぎ、アントーニョはそのままアーサーをベッドに押し倒す。


「ちょ、今日はっ……」
「うっさいわっ!」

アーサーの抵抗を軽く封じ込めてアントーニョはせっかく着た洋服を脱がせていく。

こうなると腕力的な意味でも経験的な意味でもアーサーにアントーニョを止めるのは不可能だ。

なすすべもなく昨夜の続きとばかりに貪られて意識を失い、気がつけばキチンと新しい服を着せられた状態の肩に、アントーニョが額を押し当てた状態でため息をついていた。


「…と…にょ?」

若干掠れた声で問うと、アントーニョは小さく

「堪忍…」
と、謝罪の言葉を口にする。

「でも…他を見んといて」
「え?」
「めっちゃ妬いてまう」
「…?」

「あーちゃん、なんや今日張り切ってオシャレしようとしとったやん。
やっぱり女子校行くからやろ?」
プクっと膨れるアントーニョにアーサーは唖然とした。


いやいや、それは……

まさか嫉妬でこんなことしたのか?

――どうしよう…嬉しい…

思わず頬がほころんでしまうアーサーに、ますますアントーニョの機嫌が降下していく。
それに気づいたアーサーは慌てて訂正をいれた。

「違う。逆だ。俺…トーニョが女子高生に目が行くだろうなって思ってて…」
「はあ?」
「その……比べられたら敵わないけど…でも……」

不機嫌なアントーニョの誤解を解こうとそこまで言ったものの、急に自分が随分と恥ずかしい事を言っている気がして口ごもると、チラリと見上げたアントーニョも赤くなっている。

「…あーちゃん……」
はぁ~と大きく息を吐き出すアントーニョ。

「も~どんだけ親分夢中にさせたら気がすむん?あかん、あかんわっ!」
と、ぎゅむぎゅむと抱きしめられた。

「なんでそんなかっわかわええ事言うん?
もうあーちゃんよりかわええ子なんてこの世におるわけないやんっ!」

顔中に降ってくるキス。

どうやら機嫌が戻ったようだ。
と、同時にアーサーの機嫌も戻ってくる。

予定より随分と早く起きたので、そんな事をやっていてもなんとか待ち合わせの時間ぎりぎりには待ち合わせ場所である聖星の校門にたどりついた。


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