ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん【前編】_10

ヤンデレ台風進路変更


「ヴァルガス、なんかさ、校門の所で呼ばれてるぞ~。」
クラスメートが帰り支度をしていたロヴィーノの肩をポンと叩いた。


「俺?誰だろ」
「ん~なんだか聖星の制服着たちょっと可愛い感じの子」
言われてロヴィーノは首をかしげる。

聖星…最近どっかで聞いたような…?

ギルの従姉妹…ならギルのとこに行くだろうし、まさか通学途中に一目惚れされたとかか?
まさか…な。


そう、ロヴィーノは今朝のフランシスの電話などその瞬間まで全く忘れていた。

誰だろうな、と、思いつつも、丁度帰るところではあったし、ロヴィーノは鞄を手に校門へと急いだ。



「ふ~ん…あなたがロヴィ」

人だかりとまでは行かないまでも2~3人の男子が声をかけていた少女は、それを完全に無視するとロヴィーノの前に立った。

ウェーブのかかった髪をカチューシャでまとめ、その上から聖星の制服であるベレー帽。

お嬢さんぽい制服に身を包んだそのちょっときつい猫っぽい印象を与える少女は、ロヴィーノを見るなりいきなり

「たいした事ないですねぇ」
と言い放った。

ぽか~んとするロヴィーノ。

本当にぽか~んである。

初対面…のはずの人間にいきなりこれである。
ロヴィーノじゃなくても唖然とするだろう。


そんなロヴィーノに構わず、少女はまたいきなり、さらに衝撃的な言葉を吐き出す。

「こんな冴えない…しかも男がホント身の程知らず~。
フラン様につきまとわないでくれます?」

あ~!と、ロヴィーノは思い出した。
もしかしてこれが今朝のフランシスの電話の電波少女か…。

ただの変な電波な少女と聞いていたからもっと変なのを想像していたが、目の前の少女はまあ結構可愛い容姿をしている。

このレベルならもうあいつも付き合っちまえばいいのに…などとしみじみ思っていると、目の前の少女はイライラしたように続ける。

「あなたねぇ、聞いてますっ?!ブサイクな上に鈍いですねっ!」

ブサイクっ?!
前言撤回。ただの失礼な女だ。

「フラン様はね、アリスの彼なんですぅっ!
しつこい男につきまとわれて迷惑だって言ってるのっ!
わかる?!つきまとうのやめてください!」

両手を腰にあててそう言い放つ少女。


頭痛がしてきた…。
なんで自分がよりによって男と付き合わなきゃならない。

確かに好きなのは男のアーサーだが、別に元々男が好きなわけではなく、月並みだが好きになった相手がたまたま男だっただけだ。


「別につきまとってねえよっ」

人聞きの悪い…と、その言われ方に腹が立ったのもあってぶっきらぼうに言うと、アリスは金切り声をあげる。

「つきまとってるじゃないですかっ!!今朝フラン様に電話してたくせにっ!!!」

あ~、あのせいか…うぜえっ!といい加減苛々してきて、

「あれは向こうからかけてきたんだっ!ざけんなっ!!」
と、そのまま校門を通り過ぎる。


「あ、ちょっと待ちなさいよっ!逃げるんですかっ?!」
少女は慌ててロヴィーノを追ってきた。

ロヴィーノは黙って足を速め、さらに少女が追ってくると最終的には走り出す。

「ちょっと!逃げないで下さいっ!
ちゃんと約束して下さいっ!フラン様につきまとわないって!」

「つきまとってねえっ!」
「つきまとってますっ!フラン様迷惑してるんだからっ!
男のくせに身の程知って下さいっ!」

まるで本当に自分がつきまとっているような言い方に、ロヴィーノは苛立ちを抑えて必死に逃げるが、相手はひたすら追ってくる。

男子高生と女子高生二人が叫びながら追いかけっこをする図を道行く人達は物珍しげに振り返ってみている。

ようやく駅についたが、やっぱり追ってくる。

あんのクソ髭っ!ややこしいことに巻き込みやがってっ!!
今度あったら絶対にあの髭引っこ抜いてやるっ!と不穏な事を考えながら、ロヴィーノが駅を走り抜けると、いきなり横から腕をグイっとひかれる。

そのまま大きな影の後ろに引っ張られ、少女アリスはその影を前に立ち止まった。



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