ここまではさすがに追って来ないだろう。
一応個室に入って携帯の着信履歴からロヴィーノに電話をかけ直す。
『もしもし?お前大丈夫か?!何があったのか?』
さすがに尋常じゃない様子に聞いてくるロヴィーノに、もう学校には行けないと、フランシスは事のあらましを告げた。
「…というわけでさ…学校行くの無理すぎて…。とりあえず今は時間ないから、落ち着いたら相談乗って欲しいんだけど…」
『お前さ…まさかずっと学校休むつもりか?』
電話の向こうからロヴィーノの呆れた声。
「いや、その子聖星でさ…もうすぐ学祭でその準備期間で暇らしいのね。
だから学祭終わったらとりあえず平日は向こうも学校あるだろうから大丈夫だと思うんだけど…」
『いつ終わるんだよ?』
「わかんない…」
電話の向こうからロヴィーノのため息。
『ギルの従姉妹が聖星だった気がしねえ?聞いてもらえばいいんじゃね?
上手くすれば引き取ってもらえるかもよ?』
「あ~、その手があったか…」
ポン!と手を叩くフランシス。
『じゃ、とりあえず今日休むことは言っといてやるから。』
ロヴィーノは言って電話を切った。
フランシスはそれからすぐギルベルトに電話をかけて、事情を話す。
しかし
『あ~…わりっ。もうすぐ電車乗るから携帯切らねえとだし、直接かけてくれ。』
と、ギルベルトはエリザベータの携帯の番号を告げて即電話を切った。
まあエリザベータは最初の事件の時に同じオンラインゲームでプレイしていた仲だ。
全く知らないわけでもないし、ギルが良いと言うのだからいいかと電話をかけてみる。
コール音3回で電話がつながると、
『はい♪フランよね?何か面白い事あった?』
実は無断で番号を聞いているので良いのかとドキドキしてかけたわけだが、何も言う前からわかっているということは、どうやらこちらの番号はとっくにあちらに知られているらしい。
「え~っと、お久しぶり。
なんかギルちゃんお兄さんの愛の糸をすでにエリザちゃんにつないでくれちゃってる?」
『あ、携番のこと?ごめんね、勝手に。
実は学園祭の衣装についてデザイナーさんの息子さんのフランに相談したくてローデさんに聞いたの。でも結局かけないまま時間がたっちゃって…』
「いやいや、エリザちゃんみたいな美女の携帯に登録してもらえるなんてお兄さん光栄」
『お上手ね。で?私に何か?』
「あ~、実はねちょっと聞きたいんだけど、流星祭っていつからなのかな?」
本当ならせっかく美女との電話なのだからおしゃべりを楽しみたいのだが、さすがのフランシスも今は余裕がない。
本題に入ると、エリザベータは
『突然ねぇ…』
と少し不思議そうに言ったあと、それでも
「明日からよ。土日の二日間だけど皆でくる?」
と聞いてくる。
「いや…あのね…実はそれどころじゃなくて…ギルちゃんから何か聞いてない?」
『ギルに?ううん、何も聞いてないけど?』
と、また不思議そうに先を促した。
「んじゃ、いいや。エリザちゃん、白鳥有栖って子知ってる?」
『白鳥さん…ねぇ…』
考え込むところを見ると知らないらしい。
『ちょっと待ってね。聞いてみるわね。』
と、それでも調べてくれる気になったらしく、
「皆、白鳥有栖さんて知ってるかしら?」
と聞いてくれているのが電話越しにわかる。
「白鳥さん、清香さんと姫乃さんなら知ってるけど…何年の?」
との誰かの声にエリザベータはまたフランシスに
『えと、何年生の?』
と聞いてくる。
そこまでは見ていなかった…。
「ごめん、そこまでわかんない」
フランシスが言うと、エリザベータは
『そう…』
と少し考え込んだ。
『胸の百合の模様の横の学校のイニシャルは何色だった?青?赤?』
エリザベータの言葉にフランシスは必死に記憶を探る。
「青…だったな。」
『じゃあ高等部のはずよねぇ…私が知らないという事は3年ではないし…』
「エリザちゃん…そんなに同学年詳しいの?」
『ああ…聖星は一学年100人しかいない上にほとんどが幼稚舎からだから同学年はほぼ顔見知りなのよ。
ちょっと待ってね。2年の子は知らないそうだから1年の子にも聞いてみるから』
そう言ってまたエリザベータは聞いて回っている。
そして数分後…
『フラン…そういう名前の子はいないみたいだけど…一応白鳥さんという子は3年に姫乃さん、1年に清香さんがいるんだけど…』
本名じゃ…なかったのか…。
そのどちらかなのか、もしくは全く偽名なのか…。
身元がわかれば学校に言えばなんとかしてもらえるかと淡い期待を抱いてみたのが…フランシスはがっくり肩を落として電話を切った。
あ~あ、家に帰ったら明日教師にどやされるなぁ…。
今から学校行ってもそれはそれで教師にどやされそうだが…教師には放っておいても明日どやされるのだから、今日どやされておこうか。
で、電波が待ち伏せしてたら写真とってエリザに送って身元洗ってもらうか…。
フランシスは覚悟を決めて学校に行った。
幸い…学校には行きも帰りも待ち伏せはなく、なんだか拍子抜けするフランシス。
しかし…嵐は去ったわけではなく…進路変更しただけだと言うのをフランシスが知るのはもう少し後の事だ。
その頃フランシスがなんとか回避した嵐は、彼が向かって欲しくないであろうあたりへと進路を向けていた。
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