ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん【前編】_6

真犯人発見


『誤解だっ!マジ勘弁してくれ…ってかどうなってんだっ?!』

逃げた。とりあえず逃げた。
いや、戦略的撤退というやつか……。


もうわけがわからない。

あれから仕方なしに話を聞く事にして、自分達は初対面なのになんでいきなりそんな話になるんだときいてみたら、初対面じゃない。
あの夜はあんなに優しかったのにとか言われた。

ありえない
絶対にありえない

ギルベルトは母親のいない家庭の主夫役なので、夜遊びなどしない。夜は自宅だ。

そう言うと、私アリスですっと言われた。

どこのアリスさん?と聞いたら本名は白鳥有栖。
オンラインゲームでギルベルトのキャラに助けられたというのだ。

一体どうなっているのだ?

確かにアーサーに出会うきっかけになった初めてのオンラインゲームでは、もしかしたら可愛い女の子が自分に一目惚れ…などという事を思ってみなくもなかったが、これはない。

そもそも最近ゲーム自体をやってない。

誰かがギルベルトの名を語っている?

まあその犯人探しはあとにするとして、それで何故結婚?と聞いてみると、なんだか実は自分とギルベルトは前世では魔王に引き裂かれた恋人同士で来世で結ばれようと誓った仲だとか言われたわけで……。

この時点でもうだめだと思った。
ごめん、無理、マジ無理…とばかりに、自慢の脚力を駆使してその場から逃走した。

それを全て話すと、ギルベルトの生活形態を知っているアントーニョはとりあえず納得してくれたようだ。

『ま、浮気やないのはわかったからもうええわ~。
親分あーちゃんとベタベタすんのに忙しいからまたな~』

「え?ええ??そこは一緒に犯人探そうとかそういう話になんねえかっ、普通っ!!」
と言う焦ったギルベルトの言葉が届く前にプツっと切られる電話。


一体なんなんだ…
俺様が濡れ衣着せられたままな事よりアーサーとイチャつく方が大事か?…と一瞬思ったものの、まあそこで自分との友情の方が大事とか言い出したら、それこそアントーニョじゃない。

アントーニョの偽物だ。


「仕方ねえ…女の事だしフランにでも相談すっか…」

アントーニョに友達甲斐など求めてはいけないと諦めたギルベルトは今度はもう一人の悪友、フランシスに電話をかける。

そして、オンラインゲームで自分の名を語った奴のせいで、アリスと言う女の子に付きまとわれて困っていると、簡潔に話した瞬間、ヘラリと言われた

『あ~、アリスちゃん?なんでギルちゃんのフルネームまで知ってるんだろ?』
の言葉で真実を知る。

「ざけんなっ!犯人はお前かぁあああ~~!!!!!」





『いや、ごめんね~。』
へらり悪びれないフランシス。


しかし聞いてみると、

『お兄さんたまにはシーフとかしてみたくなったんだけど、イメージ的に自分のキャラじゃないなぁって思って、ギルちゃんの容姿借りてギルってハンドルネームでプレイしてただけなんだけど…。
フルネームまでは言ってないよ?さすがに』

と、まあ微妙に許容の範囲である。

「じゃ、何故名前どころか最寄り駅まで知ってんだよ?」

『わかんない。
でもとりあえず今日インしたらこの容姿と名前は友達のものだからって言う事は伝えておくね。ごめんね、ギルちゃん。』

と、ホントにいたずらとかではなく他意も悪気もなかったようなので、そこでおさめておくことにした。

普段ならここで色々危機管理的な何かが働くのだが、さすがのギルベルトも今回は当事者すぎてそこまで気がいかなかった。

そして…これがフランシスの恐怖の始まりだったのだ。


Before <<<     >>> Next


0 件のコメント :

コメントを投稿