ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん【前編】_5

「…で?なんで落ち込んどったん?」

アントーニョの愛情というのを身体で散々示されたアーサーが意識を飛ばしている間にホットチョコレートを入れてきたアントーニョは、ベッドの中でグッタリとしているアーサーを起こしてマグカップを渡す。


――する側の方が絶対に疲れると思うんだが、何故こいつはこんなに元気なんだ……

アーサーはスッキリしてご機嫌な様子のアントーニョを見上げてそう思う。


じ~っと見上げているとアントーニョはその視線に気付いて

「なん?まだ足りひん?もう1回しよか?」
と、恐ろしい事を口にしたので、アーサーはブンブンと首を横に振ってマグカップを受け取った。

そして迂闊な事を言ったら更に思い知らされそうなので、アーサーはそれに対して恐る恐る口を開く。

「ギルが……」
散々酷使したため掠れた声で言うアーサーにアントーニョは少し不機嫌に眉を潜めた。

「ギルちゃんが何かしたん?」
「…浮気……」

喉が痛くて単語になってしまったが、アントーニョにはそれで十分なようだった。

「ちょお、親分ギルちゃんに電話かけるわ。
ロヴィに手出しとってそんなんホンマやったら半殺しやっ!」

アントーニョは殺気立った目で携帯を握りしめ、ボタンを押す。
ミシっと音をたてる携帯が壊れるすんでで、どうやら電話はつながったようだ。

「ギルちゃん…自分何してくれとるん?」

そういう声はさきほどまでアーサーに向けていたドロドロに甘い声とちょうど真逆の、背筋が寒くなるような恐ろしい声だった。




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