どちらかと言えばどうしようかと考えるために家に戻ったと言うのが正しい。
アーサーが重い足取りで自宅の門をくぐり、鍵を開けて家の中に入ると、何故かそこにはアントーニョ。
――え…?
驚いて硬直をしていると、腕を掴まれて引き寄せられ、そのまま抱きしめられる。
「急に泣きながら電話かけてくるから、めっちゃ心配したんやで」
腰に回した手はしっかりとアーサーを体ごと引き寄せ、もう片方の手は後頭部に置かれて、アントーニョの肩に頭をもたせかけられる。
その後ゆっくり頭を撫でられ、変わらぬ体温にほっとする。
「あーちゃんが無事でとりあえずホッとしたわ。」
いつものアーサーが少し疲れてたり落ち込んでたりする時にアントーニョがみせる気遣わしげな笑顔。
「チョコレートいれたるからオヤツにしよ。」
勝手に約束を反故にしたことには全く触れず、アントーニョはそう言ってアーサーの肩を抱いたままリビングへと促す。
愛され、甘やかされていると思う。
出会った頃からずっとそうだった。
アーサーの不安を取り除き、甘やかし、楽しませてくれる。
「…俺…なさけないな…」
自然とこぼれ出た言葉に、アントーニョは視線を向けた。
「なん?」
「いや…トーニョは同い年なのにいつも大人で…俺は甘やかされてばかりだ」
「…あーちゃんが甘やかされてる思うんは、あーちゃんのせいやなくて、親分が甘やかすのが好きなせいやから」
アントーニョは足を止め、そう言って俯くアーサーのつむじにチュッと口づけを落とすとそのまま向き直って両手でアーサーを抱きしめた。
「甘やかすのめっちゃ好っきやねん。
可愛えあーちゃんめちゃめちゃ甘やかしてる時が親分いっちゃん幸せなんや。
…嫌?あかん?」
顔を覗きこんでくる優しいエメラルド色の目。
男らしく整った顔。
その気になれば相手なんてよりどりみどりだろうと思う。
そう思うといったんは鳴りを潜めた不安がまたこみ上げてきた。
ジワリとまた涙がたまる目尻にアントーニョは口付けて涙を吸い取ると、
「泣いとっても可愛いんやけど、可愛すぎて親分我慢できずに襲ってまいそうやから泣き止んだって?」
と、苦笑する。
その言葉にアーサーは真っ赤になって言葉に詰まった。
「お…お前っ…!!」
「やって、しゃあないやん。したい盛りのDKやし?
泣いとるとシてる時連想してまうねん。
好きな子の色っぽい姿想像したら、もうあかんわ。
休日前以外は次の日あーちゃんがつらいやろな~って思うて我慢しとるけど、ほんまは毎日したいねんもん。
我慢できひん」
思わぬ返しに硬直している間に、アントーニョは、チョコレートはあとでいれたるわと、ヒョイッとアーサーを抱き上げた。
「今日は時間も早いしええよな?」
と、そのまま返事も聞かずに唇で唇を塞いで寝室へ直行する。
もちろん何のためにかは言うまでもない。
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