ローズ・プリンス・オペラ・スクール第十一章_9

寝室を追い出されてとりあえずとそのまま居間に移動した4人。
そこでフランシスは改めてアーサーから聞いた話を話して聞かせた。

アーサーを呼びこんだのは130年ほど前の月の属性の魔力を強く持った魔術師ティベリス。
幼馴染の従兄弟エトルリアに恋心を抱いていたものの、相手には婚約者もいて、しかも同性だ。
叶わぬ恋を振り切るように魔物退治に没頭するうち、当時の魔王に目を付けられ、取り込まれた。

こうして魔王の卵を生まされ続けるも、いつか最愛の従兄弟のいる世界を救う助けになればと魔王から情報を引き出し続ける。

そして130年たった今年、魔王の子のうちの1匹が強い魔力を持つ魔術師を取り込み、新たな魔王の卵が生まれた。
その卵が孵るまではあと1年。
その間に卵を破壊するか現魔王を倒して卵に魔力を送り込めなくすれば、魔界は滅びるという。

逆にその魔王が取り込む花嫁が強い魔力を持っていれば持っているほど、人間界への干渉が強くなり、人間界が危機になる。

魔王の魔力が尽きるのは100年から150年。
現魔王の魔力は尽きかけているため、叩くなら今だ。

そう判断してそれを人間界にいる人間に伝えるため、同じ属性でリンクしやすい月属性の強い魔力を持つ人間をメッセンジャーとして呼び寄せたという事らしい。


その他フランシスが一通りの事を話し終わった時、ローマは
「…まじかよ……ティベリスが……」
と、額に手をやりため息をついた。

「爺ちゃん、知り合いなの?」
首をかしげて聞くフェリシアーノに、
「まさか。取り込まれたのが130年前じゃ理事長だって生まれてないって」
と笑うフランシス。

それにローマは珍しく悲痛な顔を浮かべた。

「ティベリスは…俺の曾爺さんの兄貴…つまりこの学園の創始者エルトリアが惚れてた相手だよ。」
「へ?」

「当時は同性に惚れるなんざ正気の沙汰じゃなかった。
しかもティベリスはすげえ優秀な魔術師で…エルトリアはただの人間だった。
だから諦めるために親の決めた婚約者を一度は受け入れたんだがよ、ティベリスが魔物退治のさなかに行方不明になって…おそらく食われたんだろうって事になった時、後悔したエルトリアは婚約者と別れてこの学園を作ったんだ。
ティベリスのような能力者が1人で戦わないでいいように能力のある奴を教育すると同時に、同性に恋情を持つ事が少しでも世の中に受け入れられるように男だけの歌劇団を作ったんだとよ。
まあそれが後に魔術の属性の研究が進んで今みたいに適した属性の者同士の交流を深めるためっていう目的が追加されてきたんだけどな。
その後もエルトリアはずっと独り身で、俺の親父は随分可愛がってもらって、そんな話を聞いて育ったモンだからこの学園を引き継いじまって、さらに俺が今理事長やってるんだがよ。
まあなんつ~か…時代の悲劇ってやつだったんだな…。」


苦い表情で語る祖父の話に耳を傾けながらも、フェリシアーノは考えこむように俯いた。
そこに心配するようにギルベルトの頭の上からパタパタとルッツが飛んできてフェリシアーノの肩に止まって、軽く頭をすり寄せると、フェリシアーノはそれに気付いてフワっと笑う。

「ありがとっ♪お前俺を心配してくれたんだ。」
とフェリシアーノがその黄色の頭を撫でると、ルッツはピィっと鳴いてうつむく。
その様子はまるでフェリシアーノの言葉に照れているようで、フェリシアーノはまた笑った。





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