ローズ・プリンス・オペラ・スクール第十一章_6

――坊ちゃん…俺だよ?わかる?

夢の中に入り込むのは初めてではない。
以前、クリスマスにお付き合いしていたレディの夢に入り込んで花園に招いて花をプレゼントしたことがある。

それでも他とリンクしている相手の夢におじゃまするなんて初めての体験で、かなり緊張をした。

いわば強引に割り込む事で精神を傷つけかねないのでは…と、おそるおそる夢の空間を広げて自分で自分を抱きしめるようにふるえているアーサーを空間内に取り込むと、そこで初めてフランシスの存在に気づいたように、アーサーは驚いた顔で振り返った。

――フラン…シス?
涙で濡れたペリドットがフランシスの姿を捉える。

――うん。今俺は坊ちゃんの夢としてお邪魔してるわけなんだけどさ…現実の世界では坊ちゃん眠ったままうなされててさ、トーニョがめちゃくちゃ心配してるんだけど…何があったの?

その言葉にアーサーはひどく怯えたように首を横に振った。

――トーニョには……言えない…

――……ん~…じゃあお兄さんになら言える?
トーニョにはもちろん、坊ちゃんが嫌なら誰にも言わないから。ね?
今さ、俺らが知らなかっただけで色々大変な事が起こってるんだ。
月の魔力持ってる人間が何人も意識不明になってるって。
坊ちゃんの今の状態に関係あるの?

――何人も……

アーサーはそこで俯いた。

――きっとみんな帰るに帰れないんだと思う……

――なんで?
――だって…パートナーに合わせる顔がない……。

そこでまた涙を流すアーサーに、フランシスは静かに
――話してくれる?
とうながす。

――最初は…夢かと思ったんだ…
アーサーは口を開いた。



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