ローズ・プリンス・オペラ・スクール第十一章_2

昏睡


いつもの通りの朝のはずだった…。

劇場の一件のあと、理事長に聞いた話は結局アーサーにはしなかった。

ただ、理事長の孫であるがゆえに実は潜在的魔力が高いフェリシアーノが狙われている…そしてそのフェリシアーノを囮に魔物をおびき寄せる事になったため、フェリシアーノが護衛のギルベルトと街をぶらつくのに同行することになった…そう伝えて2日に1回だけ同行することにしたのだ。

劇場の一件ですっかり疲弊してしまっているアーサーに無理がかからないように…と、最初に毎日同行しろと言われたのを断って2日に1回にし、何もない日はなるべく疲れないように休ませる。
体調を崩したりしないように細心の注意を払ってきたつもりだ。

それなのに……


あれから5日たった朝…今晩は同行する予定の日なので、ゆっくり寝かせておいてやろうと、アントーニョは1人起きてベッドから出ると、離れの小さな庭で趣味で作っているトマトの世話をしに行った。

まだそれなりに肌寒くはあるが、一部温室で育てているトマトはそれでも日差しを浴びて赤々とした実をつけている。

今日はこれを朝のサラダにいれたろか…
アントーニョは機嫌よく食べる分だけのトマトをもいでかごに入れる。

そして水や肥料をやり、庭の雑草などを抜くなど一通りの作業を終えると、キッチンへトマトを置いてバスルームへ。

泥と汗をゆっくり落としてバスルームから出るとキッチンへ向かう。

そこでアントーニョは異変に気づいた。
弾かれたようにトマトを握ったままキッチンを飛び出す。

そのまま一気に階段を駆け上り、バン!と乱暴に寝室のドアを開けてベッドに駆け寄ると、ひどく青ざめた顔でアーサーがうなされていた。

「アーティ、アーティ、起きっ!」
ソっと揺すってみても目を覚まさないので仕方なく大きく揺さぶってみるがやはり目を覚まさない。

何か様子が変だ。

「ちょっとだけ待っとってな」
と、アントーニョはアーサーをギュッと抱きしめるとガラっと窓を開け、数十メートル先に見えるフランシスの寝室の窓に向けて、手にしたトマトをヒュンッ!!と思い切り投げる。
それは恐ろしいことに、窓ガラスを割って室内に…。

「すぐ使いっぱが来るさかいな」

と、それから即、アーサーに風を当てないようにとぴしゃっと窓を閉める。
もちろん窓を閉めても風が入ってくるようになった某部屋のことなどは一切気にしていない。

脳裏を占めるのは青い顔でひどく震える愛しい対の事のみだ。

「アーティ、目、覚まし」
軽く頬を叩いてみてもやはり意識は戻らない。
目を覚まさせてやりたいが、苦痛を感じるほどに衝撃は与えたくなくて、アントーニョはぎゅっとアーサーを強く抱きしめた。

「親分、ここにおるで?
なんも怖い事も心配せなアカンこともないんやで?」

目をさましてくれない以上、ただそうやって少しでも温かい体温が伝わるように抱きしめて、安堵を与えるような言葉をかけることくらいしかできない。






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