ローズ・プリンス・オペラ・スクール第十一章_1

暗闇の中で…


ひどい吐き気…体中を燃やしてしまいたいくらいの不快感と嫌悪感…。
グラグラと揺れる頭はまともに働かない。

死にたい…死にたい…死にたい…。

アーサーの精神を魔界へと呼び込んだ青年は魔王の花嫁と呼ばれる、魔王の子孫を造るために魔王に取り込まれた、強い月属性の魔力を持った青年…ティベリスだった。

魔王に取り込まれ、自由を奪われているため死ぬこともできず、ひたすら卵を造る魔力を吸い出すために身体を弄ばれ、望まぬ快感を引き出される…。
そんなティベリスの130年あまりの過去を疑似体験したアーサーは暗闇の中でもがいた。

死んだほうがマシ…死ねる事が唯一の幸せであり希望である…そんな状況がこの世にあるとは思っても見なかった。

実際にはアーサー自身はティベリスの記憶を辿っただけだが、感覚を共有していたため、その悲しみ…苦しみ…絶望感…そして魔物に嬲り弄ばれたおぞましい感触は記憶として残っている。

他人の記憶をただなぞったにしてはリアルすぎる感覚で、まるで実際に体験してきたかのような気すらしてくる。

今ここはどこなのだろうか…と、現状をみるのが怖すぎて目を開けられない。

――…てぃ……アーティー…

遠くで声がする。
ティベリスの記憶をたどっている間、何度も何度も求めた相手……
手を伸ばせば届くのだろうか…それともこれは幻聴なのだろうか……
それを確認することすら怖くて、目を開ける事が出来ない。

――…けたって……目ぇ……

泣き声…何故………





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