ローズ・プリンス・オペラ・スクール第九章_4

「まず魔がどこからなんのために来るかだ。

魔は普段は別空間にいる。これを仮に魔界って言っとくな。
でもって俺らの空間を仮に人間界とする。

奴らは魔界からもう一つ間の空間を通して人間界の地表にゲートを開いてやってくる。
そのゲートは特殊な条件を備えた場所に開かれるんだが、その条件については不明だ。

で、魔がどうしてわざわざ魔界からやってくるかというとだ、魔は魔同士、もしくは単体で子孫が残せねえらしい。
んで、魔力の高い人間を自分の体内に取り込む事によって卵を生むんだそうだ。」

そのギルベルトの言葉で、フェリシアーノは顔色を失い、アントーニョはギュッとアーサーを抱きしめた。

「ちょ、ちょっと待ってっ!もしかして俺って魔物の赤ちゃんとか出来ちゃうの?」
さすがにショッキングすぎる話に涙目で身を乗り出すフェリシアーノだが、
「いや、取り込まれてねえから大丈夫。
取り込まれたらもう分離できねえし。」
というギルベルトの言葉に、
「良かったぁ……」
と、大きく胸をなでおろした。

その様子に今は小鳥の姿でギルベルトの頭の上にいるルッツが少し身を硬くしたのに気づいたのはギルベルトだけである。

――気にすんなよ、ルッツ。

そんな気持ちを込めて指先でそのふわふわした頭を撫でるが、普段ならピィとそれに応えて鳴くルッツが、その時はその指先にただ少し頭をすり寄せるのみで、ああ、これはちょっと落ち込んでいるな、と、ギルベルトは少し眉をしかめた。

そんなやりとりで少しギルベルトが黙り込んだところで、今度はローマが口を開いた。

「まあな…それが楽観もできねえんだよ。
3人だけじゃなくてフェリ、お前を呼んだのもそれだ。
おい、ギル、説明続けろ。」

そう言われてギルベルトはまた続ける。

「ということでだ、フェリちゃんも爺さんの孫だしたぶん潜在魔力が強いんだろうな。
今回の魔物が二人を狙ったのもそういう理由だ。

で、まあ普通なら魔物退治してめでたしめでたしって言いてえとこなんだが…トーニョが焼き払ったクローゼット見たんだけどな、たぶん本体には逃げられてる。

でもって…言い難いんだが、今までの事例からすると、一度逃した魔物はもう一度同じ相手を狙ってくる。」

「冗談やないでっ!ほな、即魔界までそいつドつきに行かんとっ!」
案の定、気色ばむアントーニョにギルベルトは

「すみません、これから先の説明は理事長が…」
と、言いにくそうにそう言った。


なんだよ、意気地ねえ…と言いつつもローマは無理強いはせず、じゃ、俺が話すか…と、口を開いた。


「たぶんより狙われてんのはお姫さんよりフェリシアーノだ。」

「へ?」
その言葉にフェリシアーノはポカンと自分を指さし、フランシスは

「何故?どう考えてもフェリちゃんより坊ちゃんの方が魔力高いでしょ?」
と、もっともな質問をする。

「あ~それなんだがよ、そこでさっきの話だ。

実は魔物が人間を取り込めばそれで子ども作れるわけじゃねえ。
人間の側にそれを受け入れる意志がねえとダメなんだ。
だから魔物は媚薬使ったり脅しをかけたり美味しい条件をぶらさげてみたりと、色々駆使すんだけどな。

で、多分…な、どんだけ仕掛けても堕ちなかった事でお姫さん取り込むのは難しいと判断したんだろうな、先にフェリシアーノを確保した上で、お姫さん堕とそうとしてたんだ、魔物は。
より高い能力を持つ相手を取り込みたいのは確かだが、相手が堕ちねえと意味ないから。

そういう意味ではトーニョがお姫さんに手出してたのは正解だ。
トーニョ自身が言ってたように、特定の相手以外に身体許すことに嫌悪感持つし、自分のパートナーと比べて違和感を感じてそれがストッパーになる。
それでも知能の高い奴は時間かけてでも色々な手駆使して堕とそうとすんだけどな、今回のは下等生物だったから。」


「…俺は……取り込まれちゃうのかな?」
祖父の話に再度フェリシアーノは青くなって俯いた。
「そうならねえように、今この話して、色々考えて相談してる。」
言ってローマは、とりあえず…と、ギルベルトに視線を向けた。

「対は選ばねえ…そういう約束だったし、実際に選ばれたわけでもねえんだが、こうなるとフェリが一番敵引き寄せっから、ギル、お前当分フェリ引き取れ。
対外的にはそうだな…今回の舞台の他の主要人物がみんな適応者だから、適応者に慣れるためとでも言っておくか。
ってことで、とにかく時間がある時はフェリ連れて外に行って魔物おびき寄せて、舞台が終わるまでに今回の魔物については片をつけろ。」

「ラジャ。じゃ、これから引越しだな。フラン、荷物運び手伝えよ?」
「はいはい。わかってますよ。」

了承したギルベルトに言われて、フランシスも軽く肩をすくめて請け負った。

「トーニョも他人ごとみてえな顔してねえで、なるべく行動共にしろよ?
お姫さんだって狙われてないわけじゃねえんだからな?
どんなに強い絆があっても、取り込まれる時もあるんだ、油断すんな。」

と、そこでローマがさらに言うと、アントーニョは嫌そうな顔をするが、一応了承する。

それを持ってローマは
「とりあえず話の第一段階は終わりだな。」
といったんの話の終了を宣言した。


「へ?第一段階?」
その言葉にフランシスとフェリシアーノは目を丸くするが、アントーニョだけは驚く事もなく、忌々しげに舌打ちした。

「下等な魔物がいるっちゅうことは、知能高い魔物もいて、そいつらが人間と取引しとる…もしくはもっと嫌な事考えるなら、人間に化けとる可能性もあるっちゅうことやろ?」

アントーニョのその言葉に、事情を知るローマとギルベルト、知らないフェリシアーノとフランシスはそれぞれ別の意味で驚きの表情を浮かべた。

「トーニョ、お前脳みそあったんだな…」
と、なんとも失礼な台詞を吐くローマ。

その言葉自体には特に思うところはないらしいアントーニョだが、茶化されて時間を取られる事には腹が立つらしい。

「んなもんわかるわ。茶化しとらんとちゃっちゃと進めてや。
で?学校とかに潜んでる可能性もあるん?
そんなら俺もアーティと同じクラスにしたってや。
別に留年扱いでもかまへんから」

まるで必死に子どもを守る子育て中の野生動物のように神経質になっているアントーニョに、ローマは、まあ落ち着け…と、眉をしかめる。

そして、アントーニョ、ギルベルト、フランシス、フェリシアーノの顔をグルリと見回した後、これは絶対に他言無用だ…と、厳しい顔で口を開いた。

「少なくとも校内では魔力感知システムが働いているから、特殊な魔力を感じれば理事長室に連絡がくる。
だから可能性としては魔が紛れ込む可能性は限りなく低い。
学園が宝玉に選ばれるくらいの魔力のある学生を集めているのは、そのためだ。

魔力の高すぎる人間を魔に渡して次の魔王を造らせない…そのためにそうなる可能性があるくらい魔力が高い子どもを学園に集め、保護し、魔から身を守る術を教える…それがこのロープリの隠れた…しかし一番の存在意義ってわけだ。」




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