ローズ・プリンス・オペラ・スクール第九章_1

事実と分析


「厄介なことになったな…」
帰還後早々にギルベルトに報告を受けると、ローマは珍しく難しい顔で腕を組んだ。

「もう例のことは少なくともトーニョには隠しきれないと思います。」
と、こちらは淡々と言うギルベルトに、ローマは、それなんだよ、と眉を寄せる。

「あいつはなぁ…隠し事とか苦手だし、たぶん言うなっつっても即忘れるやつだから…」

「あ~でも…アーサー抱え込んでから変わってるかもしれません。
アーサーにそれで害が及ぶってなったらぜってえに言わねえ気が…」

感情に馬鹿正直なアントーニョだが、対を持ってから変わった気がした。

自分はその現場に居合わせなかったからハッキリしたことは言えないが、今日のあの状況でアントーニョが敢えてあんな場所でアーサーを抱いたのは、おそらく本人が言うようにアントーニョ自身が我慢できなかったからではない。

大事に大事に…それこそ強い日差しや冷たい風にあてるのさえ嫌がるようなくらい大切にしている対なのだ。
身体に負担になるような場所で襲うような事はするわけがない。

おそらく催淫効果に苦しむアーサーを楽にするため…あるいは本人にそう求められたのかもしれないが、自分がしたくなったと自分の意志だったとすることによって、アーサーの精神的な負担を軽減してやろうと思ったのだろう。

アーサーのためなら敢えて色々気を回して真実を伏せるくらいの事は当たり前にやる。
それをギルベルトが指摘すると、ローマはまだ少し迷っていたが、最終的に

「隠すと逆にあいつ対を守ろうとして変に暴走しますよ。」
とのギルベルトの言葉に意を決したようだ。

「しかたねえ…話すか。」
ローマはそう言って立ち上がると、ギルベルトの前にバサバサっと大量の資料を積み上げた。

「話すからには先に進める。
これはそのための今の時点でわかっている魔についての資料だ。
進めるからには情報と理解が必要だからな。
どうせあいつらに言っても読みやしねえし、理解もしねえ。
だからお前が読んであいつらに理解できて必要だと思う情報をピックアップして説明しろ。」

今から?この量を?とさすがに思って視線だけで尋ねるギルベルトに、ローマはにやりと
「あ、ちなみに俺も全部は読んでねえ。俺も知りてえから宜しくなっ」
と、ありえない事実を告げたのだった。


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