「まあそれはいいや。で?何が気味悪いって?」
と聞いてみると、アントーニョにしては珍しく逆に呆れたような目で
「自分…気にならんの?」
と聞いてくる。
「何が?」
「魔物って結局なんなんやろって…」
「何って?」
いきなり概念的な話をされて…しかも感覚だけで生きているようなアントーニョにそんな話をされて、フランシスは戸惑った。
「俺ら…普通にいる場所言われて着いたら向かってくるさかいどついて終わっとったんやけど、おかしない?
催淫ガスまでやったら戦闘意欲奪うためって言われへんでもないけどな。
なんで本当に色っぽい事しとるん?」
「いや…捕食しようとかしてただけじゃないの?結果的に色っぽく見えるだけで…」
まあ…魔物からすれば食べるなら服とかは邪魔だろうし、人間が果物の皮をむくような感覚で破いていたのでは…と、フランシスは思ったが、アントーニョは真剣な顔で首を横に振った。
「親分、宝玉でアーティの状態結構わかるやん?
で、感じ取っとったんやけど、あれ、どう見てもいかせようとしとるとしか思えんかったんや。
捕食言うんやったら、俺ら行くまで時間かかっとったし、二人共ちゃっちゃと食うとると思うで?
そもそも食べる目的ならフェリちゃんはちゃっちゃと引き寄せとったのに、アーティはあの場で弄んどったんはおかしないか?」
「う~ん…言われてみれば……」
フランシスも考え込んだ。
「魔物は地面の穴から湧いて出るんちゃうん?
劇場の人間はどこいったん?魔物に食われたん?
そもそも、実戦経験のある俺らと無いアーティとフェリちゃんを別々に分かれさせたんは、偶然なん?
今回のは色々おかしいで?」
「…うん…ギルちゃんもなんだか何か隠してそうだったしね…」
「なんやめっちゃ嫌なえげつない事隠されてる予感すんねん」
と、心底嫌そうに顔をしかめるアントーニョ。
「だから坊ちゃんには聞かせたくないって?」
「当たり前やん。今回の事件だけでも十分トラウマやで?」
確かに…と、フランシスも眉を寄せる。
「まあ…ギルちゃんがなんか知っとるとしたら、出元はおっちゃんやろうしな。
問い詰めたるわ。」
「確かに…このままじゃ怖くて現場出れないよね…」
アントーニョに指摘されてフランシスも改めて今までの認識が一気に覆された気がした。
本当に…魔物はなんで人間に向かってくるのか?
そこからもうわからない。
もしかして…このところギルベルトが急に1人で全部戦闘を請け負うようになったのも、そのあたりが関係するのだろうか……。
わからない事だらけだ。
その鍵をにぎるのは、理事長と……ギルベルト。
「ま、とりあえず事実わかるまで帰らない勢いで問い詰めるしか無いかもね」
争い事は苦手だが、避けて通れない事もある。
フランシスは改めて自分がそう確認するまでもなく、そうする気満々のアントーニョと共に、離れを出て理事長室へと向かったのだった。
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