ローズ・プリンス・オペラ・スクール第八章_8

「なんや気味悪いなぁ…」
アーサーを風呂に入れて着替えさせながらつぶやくアントーニョに、
「お兄さん…お前の方が気味悪いよ…」
と、がっくりと言うフランシス。

「なんやねん、失礼なやっちゃな」
それにはさすがにムッとするアントーニョだが、普段なら当たり障りなく流すフランシスもこれは突っ込まずにはいられない。

「ねえ、なんでアーサーの着替え、鍵のかかったタンスに入れてんの?!
何?この子の着替えは貴重品なのっ?!」


そう…離れについて風呂の準備をするというアントーニョに、じゃあお兄さん着替えだしておいてあげようか?と申し出たフランシスに対してアントーニョは言ったのだ。

「あ~説明面倒やしええわ。」
「は?服にこだわりあり?」
「いや、この子の着替え入っとるタンスの鍵の場所の説明が面倒やから…」

うん…なんていうか…お前みたいな怖いパートナーのいる家によもや下着泥棒に入ろうなんて勇者もいないだろうし…何故鍵付きのタンス?
そう思って、実際にさらにその疑問をぶつけてみると、返ってきた答えが…

「着替えないと出ていけんやん。」
「は?」
「いや、本気で出て行きたい思うたらいけるかもしれへんけど、少しくらい着替え探すやろから、それで時間稼げるやろ?」

――ごめん…もしかして拉致監禁用?お兄さんには理解できない世界です……

言葉のないフランシスにさらに衝撃的な言葉…

「ほんまは石の力でどっかくっついてもうてずっと離れられんようになるとか、親分以外でアーティの視界に映ってアーティの気を惹く存在を全て消し去るとか、それが無理なら逃げられんようにこの離れに閉じ込めておきたいんやけど…」

「お前…怖いわ。マジ魔物より怖いからっ!!それ絶対に坊ちゃんに言ったらだめだよ?逃げられるよ?」

「あ~、もう言うてもうた~」

「ええっ?!それでまだ逃げられてないの?!」

「当たり前やん。俺らめっちゃラブラブやで~。
アーティそれ聞いてめっちゃかわええ目ぇして、自分はなんも出来ひんけど側にいてええん?って不安げな顔して聞いてきてん。
もうあんまりかわええんで、親分その後抱き潰してもうた~」

頬を緩ませて言うアントーニョにフランシスは額に手をやった。

なんというか……アントーニョも異常だが、アーサーの方も普通じゃないと思う。
ねえ、もっと恐怖心とか警戒心とか養おうよっ!と、声を大にして言いたいが、言ったらその日が自分の命日になる気がするので黙っておく。

割れ鍋に綴じ蓋、馬鹿っぷる万歳だ。



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