狙われた少年その後
「あ~、フラン、ちょおいいか?」
汚れたり破れたりまではしていないが微妙にヘタった舞台衣装を着ているのも美しくないと、とりあえず自室に向かいかけるフランシスをアントーニョが呼び止めた。
対を持ってからは一分一秒でも二人きりになりたい、二人の時間を邪魔するなと言わんばかりだったアントーニョにしては珍しい。
「なあに?」
と振り向くと、アントーニョは
「自分もうちに来ぃ」
と、半ば強引にフランシスの腕を掴んで引きずっていく。
「え?なに?なんなの?!」
何かお兄さんやらかした?いや、やってないはず…と、脳内でワタワタと考え込んでいるフランシスの心を読んだように
「あ~、別に自分がなんかやったとかちゃうで。」
と、アントーニョは相変わらず怪力でフランシスをひきずりながらもそう声をかけた。
そして小さく息を吐き出す。
「単にな、アーティ風呂に入れて着替えさせてやったあとな、自分の魔法で眠り深くしておいて欲しいねん。
おっちゃんの話…とりあえず先に俺が聞いといて、アーティに言うかどうかはその後に決めたいんやけど、部屋に1人で置いておくのも怖いから、寝ておいてもろうて抱えていったろうかな~思うて。」
なるほど、デリカシーという言葉が辞書にないこの男でも、本当に本気の相手に対しては別なのか…。
妙なところに感心しながらフランシスが了承して抵抗をやめると、アントーニョもフランシスの腕を放した。
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