ローズ・プリンス・オペラ・スクール第八章_4

「遅えぞ、トーニョ!これ焼き払ってくれっ!!」

どうやら本体はアーサー達の更衣室の中らしい。
そちらからブヨブヨとした大量の触手が伸びてきている。

それに囚われて部屋に引きずり込まれかけているフェリシアーノを助けようと、顔を片手の袖口で覆うようにして、片手で剣を振り回しているギルベルト。

大量の触手で視界が遮られていて、駆けつけた相手がアントーニョだと思ったらしい。
そう叫ぶので、フランシスは困ったように眉尻をさげた。

「ごめん…トーニョは坊ちゃん救出したあと、先行けって言うんで置いてきたんだけど…」

こういう軟体動物系にはギルベルトの風系魔法は相性が悪いし、知能が低そうな下等生物にはフランシスの幻影も眠りもほぼ効果がないと言っていい。

唯一の頼みは炎で焼き払えるアントーニョだったのだが……。

「マジかっ!!このままじゃ本気でやべえっ!ちきしょ~!!」
その言葉に舌打ちをしつつ、珍しくひどく焦った様子のギルベルト。

「対の坊ちゃんの様子見たらすぐ来てくれると思うんだけど…」
と、フランシスも少し焦って後ろを振り返るが、一向に来る気配がなく、だんだん焦ってくる。

「…最悪…ルッツの炎で焼き払うか……」
苦いものでも飲み込むような顔でそう言うギルベルトの言葉に、フランシスはあれ?と思う。

「何?その鷲なにか魔法使えるの?炎使えるならなんで使わないのよ?」
と、当たり前に聞くフランシスに、ギルベルトは顔をしかめ、

「使えるけどこいつの炎はトーニョのみてえに対象を選べねえ。
触手や魔物焼き払おうとしたらフェリちゃんも巻き込んじまう。」
と、触手に囚われているフェリシアーノを見上げた。

「うん…じゃあギリギリまでトーニョ待ったほうが良いよね。」
そう言うフランシスに、ギルベルトは泣きそうな顔で
「それじゃあ…手遅れになるかもしれねえ…」
と、唇を噛み締める。

「いや、触手に絞め殺されるのも炎に焼かれるのも同じでしょ?
それならわざわざ炎で焼き殺す意味ないじゃないってことで…」
「その方が良いこともあんだよっ!黙れよっ!!」

珍しく感情的なギルベルトに、言われるまでもなく黙りこむフランシス。
何かが変だ…。

その方が良いってどうして?と聞いて答えるなら聞く前に説明をするタイプのギルベルトがあえて言わないと言うことは、言えない、もしくは言う気がないのだろう。



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