ローズ・プリンス・オペラ・スクール第七章_5

手を唇を舌をあちこちにすべらせるたび、アーサーは羞恥に頬を染め必死に声を押し殺すが、石を通してアーサーが感じている事が伝わってきて、アントーニョをとてつもなく興奮させる。

視覚や聴覚からだけではなく、脳にダイレクトに相手の痴態が送られて来るのだ。
男としては本当に堪らない。

かわええ…かわええ…かわええ!!
石がリンクするレベルになった対との性交を経験してしまうと、本当に二度と他と身体を重ねる気にはならないと思う。


いまだ慣れない快感にいっぱいいっぱいになって飛びかけているトコロにわざと
「気持ちええ?」
と聞いてやると、ふと羞恥が戻って耳まで真っ赤にして身を震わせるのが可愛らしくて特にお気に入りだ。

――恥ずかしい…どうしよう…
と、涙でうるんだ大きな瞳が雄弁に語るのを見ると、もう可愛さに堪らなくなって手加減できなくなってしまう。

声に出さなくてもその過ぎた快感に湧き上がる嬌声は脳に直接響いてくるので、視覚に移る必死に声を抑えている様子とあいまって、これ以上無い興奮をもたらし、理性が焼き切れる。

何度もめまいがするような快楽を享受して、大抵最後に一言

――とーにょぉ…

と、唯一小さな小さな啼き声をあげると、アーサーはいつも意識を手放す。

忘我の境地で唯一小さく小さくあげる声が自分を呼ぶ声だったりするのが、アントーニョ的にはこの世のどんな宝物を得た時より嬉しい。


気を失ってしまった小さな身体を抱き上げて風呂場に運び、身を清めてやりながら、その日自分が付けた痕を確認するのも好きだ。

たまに付け足りないなと感じると、その時にこっそり付けている事をアーサーは知らないだろう。

舞台があるので流石に衣装を着て見えるところには付けないが、逆に衣装で隠れる場所には消える事の無いよう付け直している。

それはさながら自分の縄張りを主張する動物のマーキングのようだ…いや、ようだ…ではなくそのものか…。


何もできない、やれないままだと自分に嫌われる?
何を言っているやら…。
出来ないまま依存してくれる方が安心ではないか。

自分に嫌われたくない一心でしたことのない料理をやってみて、やっぱり出来なくて失敗して泣きながら嫌わないで…とすがってくるなど、もう、自分を萌え殺すつもりでやってるのかと思った。

平日は翌日に響くからなるべく手を出さないようにしていたのだが、あまりに可愛すぎてついつい抱き潰してしまったではないか。

自分の対はなんて可愛い生き物なのだ…と日々実感している。

嫌う?追い出す?冗談じゃない。
むしろ出て行きたい離れたいなどと言われたら拉致監禁も辞さない覚悟である。

自分の可愛い可愛い対に手を出そうなんて輩が出た日には、それが人間だろうと魔物だろうと太陽のハルバードで血祭りだ。

風呂から出てバスローブで包み込んだアーサーをベッドに寝かせると、アントーニョは自分の着替えを出して身につけ、さらに着替えの入った引き出しの中にしまいこんだ小箱の中から鍵を取り出し、鍵付きのタンスを開けてそこからアーサーの着替えを出してまた鍵をかけると鍵を小箱に戻して小箱をしまう。

まあ…本気で出て行くとなったら着替えがないくらいでは引き止められないのだろうが、多少探しはするだろうから、時間は稼げる。

「…お姫さんは…ほんまわかってへんね。」
グッタリと眠ったままのアーサーに寝間着を着せてやりながら、アントーニョは笑みを浮かべた。

――自分…追い出されるどころか、もう捕まって逃げられへんて事を自覚しいや?
離してやる気なんか絶対にない。

家事なんて自分一人でもどうせやるのだ。
同じやるなら、それを喜んでくれる相手が居る方が楽しいし、それが愛しい愛しい相手ならなおさらだ。

それで拘束されてくれるならもっともっとドロドロに甘やかしてやっても構わないくらいだ。

とりあえず…料理が出来ないのはよくわかった。
それならそこはキッチリ押さえておこう。

――かわええ、かわええお姫さんのために毎日親分がめっちゃ美味しいモン作ったるからな。

アーサーが目を覚ますまでにあと数時間はあるだろう。
目を覚ました時に側にいないと寂しいだろうから、それまでに大急ぎで冷めても美味しいものを作っておこうと、アントーニョは寝室を出て、若干煤けてしまったキッチンへと急いだ。



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