誰からともなくそんな声があがり、一同がウンウンと同意する。
1年生が入学したばかりの頃、それと知らずに声をかけようとした気の毒な犠牲者が、激怒したアントーニョに学校中を追い回されて最終的に理事長室に逃げ込んで、二度とアーサーに近づきませんという誓約書を書いてようやく太陽に焼き尽くされる恐怖から開放されたのは、もはや2,3年生どころか1年生の間でも有名な話だ。
おかげで命を捨てる覚悟がないなら姫には近づくな…というのがもう暗黙の了解になっている。
その代わり…用もないのに用を作って1年生の教室のあたりに行く上級生や、鳥に興味もなかったはずなのにバードウォッチング用と称して双眼鏡を入手し、何故か1年生の教室やら廊下…太陽の適応者の離れに向かう道々などを観察するウォッチャーが増えている。
写真…というのはまだまだ特別な時しか撮れないモノなので、美術部がコッソリ描いている肖像画は大人気で裏で高額で取引をされている。
まあ…お互いバレたら命がない事なので、本当に極秘の取引ではあるが……。
持ち歩き用に、肖像画の入った皮のケースには鳥の絵が入っていて、それをスライドさせると肖像画が出てくるなどという手の込んだ仕組みが施されているのがすごい。
こうして対である皆のお姫様と退場した太陽の適応者を見送って、一同残念に思いながらもようやくホッと一息ついた。
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