「うん、声変わり…してるよな?いくらなんでも。」
「してんだろ?でもあの高音とかよく出るよな。」
「肌とか真っ白だしな…肩とか細いし…」
「あのでかいグリーンの瞳いっぱいに涙とか溜められて、あの綺麗な声で啼かれたい…めっちゃそそる…………ひぃぃ!!!」
ボワっと炎が飛んできて、慌てて避けたが、それでも前髪を燃やされた生徒が悲鳴をあげた。
――自分……何言うた?
地獄の底から聞こえるようなおどろおどろしくも恐ろしい声と共に向けられる、殺気だった視線……。
「い、いや、実際にそうするとかじゃなくて……単なる想像っつ~か……」
慌てて涙目で後ずさる生徒に、
「馬鹿野郎っ!逃げろっ!!!!」
と、ギルベルトが言って間に割って入る。
「先生っ!自分で対処できないなら理事長っ!!」
と、そこで安全地帯からフランシスが叫ぶと、弾かれたように教師が教室から飛び出した。
「トーニョ、落ち着け。な?」
と言うギルベルトの声もおそらくアントーニョの耳には届いていない。
嫉妬と独占欲…黒い炎を背負った太陽の関心は自分の大事な大事な宝物におかしな感情を抱いている事を吐露した相手に向けられていた。
「――想像?
自分…何勝手に人のお姫さんをえげつない想像に使うてるん?
脳内やから許されるなんて思うたら大間違いやで?」
いつのまにか手には赤いハルバード。
――まずい…本気で殺る気だよ、この子……
とオロオロとドアのあたりを伺うも、教師が理事長を連れて戻ってくる気配はまだない。
フランシスは少し逡巡し、そしてハッとして窓を大きく開けた。
「ア~サァ~~~!!!どうしたの、授業は休みぃぃ~~?!!」
でかい声で叫ぶと、そこで初めて普段使われていない旧校舎に人がいることに気づいたアーサーは、
「あ、休講で……」
と、少し離れた後ろ側の校舎を振り返って、窓に2年生が集まっていることを知って真っ赤になる。
――うあ、赤くなった。かっわいいなぁ…。
――シッ!今は黙っておけよ、でないと…
――うん、やべえぞ。トーニョ、マジ切れ中だしな…
などとコソコソと相談しながら、それでもソっとその様子を堪能し続ける2年生達。
一方、愛しの対が、他人がいることに気づいて歌うのを止めてしまったので、遠慮する意味もなくなって――…一応アントーニョも対の行動に対しての気遣いはあるらしい――アントーニョはハルバードを指輪に戻すと、窓から庭に飛び出した。
そして
「アーティィィ~~!!!そんなら親分と散歩でもしよか~~!!」
ぎゅうぅぅ~~っと自分より一回りは小さく華奢な対の身体を抱きしめて、顔中にキスを落とす。
「え?でも…トーニョ授業…」
「ええねんっ!教師がなんやどっか行ってもうて暇なんや~」
――いや…教師が教室にいないのは確かだけど…原因はお前だからね?
と、フランシスは思うが口には出さない。
もうこのままサボりを決め込んでもらったほうが、クラス的には平和だと思う。
ギルベルトも同意見らしく、全身の力を抜くと窓にもたれかかった。
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