珍しく教師が体調不良で休講になったので、あまり使われない旧校舎にグルリと囲まれている本当に小さな中庭の一つに足を運ぶと、アーサーは小さく歌いながら雨の粒を踊らせる。
あの日もこうやって雨で遊んでいた。
ただ、あの日と違うのは、この庭には庭をグルリと囲むようにバラが植えてあり、どうやら幼い頃から自分にだけしか見えないらしいバラの精達がキラキラと光りを放ちながらアーサーの周りを飛び回り、一緒に声を合わせてくれていることだ。
彼女達といると、人間の間で緊張し傷ついた心が癒されていく。
昔から…花の精霊達とこうして声を合わせて歌ったりするのが好きだった。
自分以外の、彼女達が見えない人間がいない時限定だが…。
妖精は否定の言葉を吐かれると傷つき、下手をすると消えてしまうのだ。
自分以外には彼女達が見えず、また、それで消えてしまう事を知ったのは随分と幼い頃で、それ以来、彼女達の話をしたことはない。
他に理解されないのは悲しい事だが、彼女達が消えてしまうよりはずっといい…。
こうしてアーサーは人間の友人達を撒いて一人ソっと幼い頃から変わらぬ小さな友人達との時間を楽しんでいた。
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