ぺなるてぃ・らぶ_6

スペイン親分の至福


ああ、こんなに満ち足りた気分は本当に久々だ。
英国にしては良い天気の午後。
すわり心地の良い上等のソファに座って腕の中にはスヤスヤと眠るイギリス。

さきほどまで怖い怖いと泣いていたのを宥めてやっているうちに、疲れたのかコテンと眠ってしまった。

ここに滞在して早3日。
イギリスがめちゃ可愛い。

こんなことなら遥か昔、上司が結婚していた頃に近づこうとすれば逃げていたのを放っておかないで、始めは強引にでも捕まえて結婚でもなんでもしてしまえば良かった。

そうしたらもっと早くからこんな可愛いイギリスを見られたのに。


初日…てっきり嫌われているものだと思っていたら、どうやら怯えられているだけなようだった。

まるで強引に捕まえてきた小動物のようにプルプルと震えているのを前にすると、めっちゃ甘やかしてやりたくなった。

もちろん、甘やかしてはいけないなどという法はないので、思う存分に甘やかす。

最初は食べさせてやってもカチンコチンになっていて反応がないので、あまり口に合わないのかとがっかりしたが、あれは昨日だったか、チュロスを食べさせている時に上司から仕事のものらしい電話が入ったので、いつもは膝上で自らの手で食べさせていたチュロスをイギリスの手に握らせて居間から出て電話を終えて居間に戻って中を覗いたら、両手にチュロスを持ってほわほわ~っとした顔でチュロスをちびりちびり嬉しそうにかじるイギリスの姿が…

あれはめっちゃ可愛かった…写メ撮っておくべきだったわ~…と、スペインは残念に思った。

ようは…緊張されていたらしい。
もっと慣れてくれば、自分の腕の中でもあんな可愛らしい様子を見せてくれるのだろうか…。

早く慣れて欲しい。
頼って甘えてくれればもっといい。
さらに…それが自分に対してだけだともっといいのだが…。

あれだけ人慣れない子が自分にだけ慣れて頼って甘えてきた日にはメロメロだ。
それが不器用にだったら、もうダメだ。
絶対に離せなくなる。
抱え込んでベタベタに甘やかしてしまうだろう。

とりあえず今は嫌ではないようなのだが、何かしてやるたび怯えたようにポロポロ泣くのをなんとかしてやりたい。
好意を怖がらないでいいのだということを、怖がりなこの子に教えてやらねば…。

始めはフランスから命じられた罰ゲームだったわけだが、今はむしろご褒美だ。
不器用で人慣れない可愛い子の側で世話をしてやれる…それはかつて不器用な子分を溺愛したスペインにとっては至福の時間だ。

衰弱しているらしく、未だ顔が真っ赤でまだまだ熱が下がらないのでとても心配ではあるが、それは同時にこうやってここに滞在して世話をする理由付けにもなる。

この体調不良が解消するまでのわずかな時間で好意を勝ち取れれば、今後この至福の時間がずっと続いていくのだ。

――親分、本気で行かせてもらうから、覚悟しといてな、親分の可愛いお宝ちゃん。

スペインはチュッと眠るイギリスの柔らかな頬に唇を押し当てると、そう言って、風邪をひかせないようベッドに運ぶため、よいしょっとイギリスを横抱きに抱き上げて立ち上がった。



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