リトルキャッスル前編_アンアサ_7

そしてフラン達3人も呼んできて全員そろって食事。
また絡んでくるかと思いきや、今度はマイクとダニーが何故か険悪状態らしい。
お互い顔を合わせようともせず、リックとユージンが顔を見合わせている。

「いったい何があったの?」
フランがコソコソっとシンディーに聞くと、シンディーはちょっと悲しげにうつむいた。

「えと…ね、ちょっと色々誤解があって…マイク、私がダニーと浮気したんじゃないかって…」
「あらら~。」
フランはジェニーと顔を見合わせる。

「まあ…男二人で揉めてる分には良いけど、シンディーに矛先向くようならお兄さんとこ逃げておいで?
ギルちゃんいればどうとでもかくまってもらえるから」
少し心配そうに言うフランに、シンディーは微笑んだ。

「うん、大丈夫だよ。でもありがと、フラン」
「ホント…遠慮しないでいいからね?」
「うん。」

「でもまあ…本当にシンディーだけじゃなくて皆危ないから。危険を感じたらいつでもドア叩いてくれたら起きるから。遠慮しないで起こせよ」
と、ギルベルトはチラリと殺気立つ男性陣に目を向けて女性陣全員の顔を見回した。

「ありがと~。ギルベルト大先生やさし~♪」
ギルベルトは女性陣からの信頼をすっかり勝ち取ったらしい。

食後…当たり前に食べっぱなしで各部屋に戻る男4人を完全に放置で、今度はさすがにギルベルトとシンディ以外の女3人組で皿洗いを引き受ける。


「皿洗い…手伝ってくる…」
男4人組が当然のように帰るのを目にしてキッチンに戻りかけるアーサーを、アントーニョが
「だ~め~やっ!」
と抱え込んだ。
「だって何も手伝ってなかった男4人組が手伝うもんだと思って出てきたけど、今帰って行ったし…女の子3人で12人分の皿洗いなんて大変だろ。」
ややムッとして言うアーサーにフランはため息をついた。

「トーニョ、じゃあ俺ら4人で女性陣と皿洗い変わるってどう?それならいいんでしょ?
で、女性陣にはその間に先に大浴場使ってもらうと。で、俺らも皿洗い終わったら入るっ。ね?」
「しゃあないなぁ…」
微妙に機嫌が悪くなりかけていたアントーニョにフランが提案すると、アントーニョも渋々うなづいた。





「ふ~、皿洗いなんて久々にしたよ~」

こうして仕事をチェンジして4人で12人分の皿洗い終了。
なんのかんの言って楽しげなフランに
「「これだから金持ちのボンボンは…」」
と、こちらは日常的にやっているアントーニョとギルベルトが冷ややかに言う。

「まあいいじゃないか。みんな一緒に並んで皿洗いなんてする機会滅多にないし」
と、そこでフォローをいれるアーサーの言葉には
「「さすがアーサーは言う事違うなぁ」」
と、やはり二人口をそろえて相好を崩す。

「お前ら…お兄さんを少しは愛しなさいよ…」
と肩を落とすフランの言葉は例によって放置で、
「それより風呂はいろか~」
と、アントーニョがアーサーの肩を抱いて促した。

「ああ、いいね。一仕事したし大きな風呂でくつろごう」
気を取り直して言うフランにアントーニョは何言うてんの?と、再度冷ややかな視線。
「俺ら内風呂に決まっとるやん。危険人物達にあーちゃんの肌なんて見せられへんわ」
と当たり前に言うのに、
「え…決まってる…のか?」
と、ちょっと残念そうな顔を見せるアーサー。
だが、そこで
「それとも物理的に見せられへんようにされたいん?親分それでもええで?」
と黒い笑みを浮かべるアントーニョに、
「いや…内風呂が良いです…」
と、諦めのため息をついた。


こうして結局男ふたりという微妙な組み合わせで大浴場を占領する事になったフランとギルベルト。
「なんかさ…もうトーニョの独占欲異常だよねっ」
長めの髪を洗うため、ペンダントを外して鏡の前に置き、ぶつぶつと文句を言うフラン。

「ん~まあ…俺らは自分の恋人じゃねえから。自分の恋人だったら案外ああなるかもしれねえぞ」
短い髪をさっさと洗い終えると、身体を洗って広い湯船につかって、ふぃ~っと身体を伸ばしながらギルベルトは苦笑する。
「そうかなぁ?お兄さん嫉妬なんて美しくない行為しないと思うな」
「そう言ってる奴が結構そうなんだぞ」
不満げに言うフランに、ギルベルトはケセセっと笑った。

そんなアントーニョに対するフランの愚痴につきあいながら、ゆったり湯につかっていたギルベルトは
「先あがっぞ。さすがにのぼせる」
と、先に上がる。
そして身体を拭いて身体が柔らかいうちにと、軽くストレッチをしていると、そのうち一人で退屈したのかフランが上がってきた。
こちらは軽く身体と髪の水気を取ると、まずブォォ~ンとドライヤーで髪を乾かし始める。

「めんどくせ~。切れよ、髪」
丁寧に丁寧にドライヤーで乾かすフランにうんざりした目を向けるギルベルト。
「冗談っ!お兄さんのこの美しい髪は至宝でしょっ!」
乾いたのかドライヤーを置いてパサパサと髪をゆする。
「あ~?髭か髪どっちかじゃね?髭そればそれなりに美女だし、髪切れば…美おっさん?」
「ちょ、おっさんじゃないでしょっ!なに、その美おっさんてっ!」
「あ~、どうでもいいから部屋戻ろうぜ。フランまた浴槽にペンダント忘れただろ、取ってこいよ」
と、ギルベルトの言葉でフランはハッとして首元を確認した。
「あ~、そっか。さっき髪洗った時…。あっぶな~。サンキュー、ギルちゃん」

フランは言って脱衣場にギルベルトを残し、大浴場の浴室に入って行く。

浴室の洗い場の洗面器の中に置き忘れたペンダントはすぐみつかった。
ホッとしていったんそれを握りしめると、フランはそれを首からかける。
それから浴室からでようとしてふと外に目をやった途端…ぼんやりと白っぽい大きな塊が何もないはずの中空を漂って行った。
一瞬硬直するフラン。

「ぎゃああああっっ!!!!!」

次の瞬間耳を塞いで叫ぶとその場にへたり込む。

「どうしたっ?!!!」
青くなって即飛び込んでくるギルベルト。
ガタガタ震えてしゃがみ込んでいるフランを助け起こした。
「大丈夫かっ?!怪我はっ?!!」
と顔を覗き込もうとするギルベルトにしがみついてフランは言葉なく外を指差す。

「外?」
ギルベルトは目を外に向けるが、見えるのは外から見えないようにするついたてと、綺麗な星空。
さらに浴室のガラス戸を開けて同じく外を見るが、見えるのはやはりついたてと星空、それからこのペンションの壁くらいだ。
「外に…何があったんだ?」
と戻って聞くギルベルトにフランは
「…白い…なんか…おばけ…おばけが浮いてた…」
と言う。
「お化けって…」
ため息をつくギルベルト。それでも
「どのくらいの大きさだ?浮いてたってどんな風に?」
と聞いた。
お化け…はありえないが、これだけ事件に遭遇してばかりいると、何かあるように思えてくる。
「あのねっ…このくらいのね、…大きさ」
と、フランは両腕を広げた。
「ふむ…シーツか何かが落ちたみたいな感じか?」
だいぶ落ち着いて来たらしいフランにギルベルトはさらに聞く。
「…ううん…。なんかス~っと横に移動してた…」
と、フランは向こうの方を指差した。
そこでギルベルトはチラリと腕時間を確かめる。11時48分…。
本来なら中空をそんな大きな物体が浮いてるなんてありえないわけだが…
ギルベルトはフランを浴室の外にうながしながら、
「確かめて来よう」
と、言う。

大浴場を出てそのまま玄関に行きかけて気付く。
「あ、跳ね橋あがってたな。」
と、そのまま1Fでジョンを探すがいない。
「しかたないな、いったん上に戻るか」
ギルベルトが言って二人を連れて階段に向かうと、丁度ジョンが上から降りて来た。
「あ、上にいらしたんですか」
ギルベルトがいうと、ジョンは
「ああ、今のうちにちょっと上の空き部屋の掃除にね。オフシーズンでもある程度やっておかないと部屋が傷むしね。」
と、笑顔を見せる。
それにギルベルトも少し笑みをこぼして
「こんな時間まで大変ですね。蜘蛛の巣ついてます」
とハンカチで軽くジョンの肩先をぬぐう。
「ああ、すまないね。」
とさらに微笑むジョンにギルベルトはフランが見た物の話をした。
「あ~…大量に飛んだ桜の花吹雪とかじゃなくて?このペンションの裏に大きな桜の木があるから。今日は風も強いしね。
それとも…幽霊かな?桜は血を吸って花を咲かせるってよく言うしね」
いたずらっぽく笑うジョンにすくみあがるフラン。
「ああ、ごめんごめん、冗談だよ。とりあえずこの時間から跳ね橋あげるとあの音で他に迷惑になるからね。
明日調べてみようか。まあ…こんな小さな島で大きな動物も鳥もいないから、何かの見間違いだとは思うけどね」
と、言われるとそれ以上は強くは言えない。
「はい、お願いします。」
と、ギルベルトはお辞儀をして、ジョンと分かれるとフランを上に促した。

部屋についてそれぞれベッドに落ち着くと、ギルベルトはフランが見たものの可能性について探る。
動物でも鳥でもない。
桜吹雪なら…飛ぶ方向が逆だ。

「なんだか…胸騒ぎがするな…」
と言うギルベルトにフランがブルルっと身を震わせる。

「もう寝ちゃおうっ。考えたくないっ」
フランがそう提案した。
「そうだな…ま、着替えるか。」
ギルベルトはバッグの中からパジャマを出すと、上着を脱いだ。
そこでふと気付いて上着から汚れたハンカチを取り出し、洗濯物用の袋に入れようとして、考え込む。

「今度はなに?」
今度はハンカチを手に固まるギルベルトに、フランが不安げな声できくと、ギルベルトはふと我に返って苦笑した。

「いや…考え過ぎだ。寝る」
と、ハンカチを袋に放り込んでパジャマに着替えて、ベッドにもぐりこむ。
寝ておかないと今回はいつ起こされるかわからない。
ギルベルトは布団を頭からかぶると無理矢理眠りにつこうと目を閉じた。 





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