そうでなければおかしい。
今の“イギリス”は、スペインと目を合わせるのも嫌がるほど、スペインを嫌っているのだから…。
こんな風に泣いているスペインを心配したり、慰めようとしたりするはずがない。
逆に言えば…あの時自分が誠意を持って謝罪と見舞いに訪れていれば、国同士のいざこざはとにかくとして、いまだに恋人関係でいられたのかもしれない。
国体であっても国の方針を前には無力だというのは、同じ国体であるイングランドにはわかっていただろうし、国策がどうのというより、個人で出来る範囲の誠意も見せなかったという事で見限られたのだろう。
そう思うとひどく自分が情けなかった。
イングランドはきっとそれでも自分の善意を信じてくれていたのだ。
なのにイングランドの善意を信じず関係を絶ってしまったのは自分の方だったのだろう。
どうしてこうなったのかはわからないが、これは本当に神様がくれたやり直しのチャンスなのかもしれない。
今度こそ選択を間違わないようにしなければ…。
急に知らない所で目覚めて不安であろうイングランドに、今の状況をどう説明すべきなのだろうか……。
そこからまず悩む。
プロイセンのようにこれが過去から来たイングランドで過去に影響を及ぼすかもしれないなどという気遣いは全くない。
ただイングランドに不安を感じさせたくない…頭にあるのはそれだけだ。
「あのな、アーティ…」
かつて寝込んだ時によくそうしていたように、横たわるイングランドの頭を優しくなでながら、昔そう呼んでいたように愛称で呼びかけると、イングランドは不安げな目でスペインを見上げた。
ああ、自分はこの目に弱いのだ…と、スペインは今更ながら自覚する。
決して他者に弱みを見せまいと普段は気を張り詰めているイングランドが、ひたすら甘やかすスペインにだいぶ慣れてきた頃から見せるようになった、助けを求めるような…縋るような目。
それはすなわち、相手が助けてくれるものと信頼するがゆえに見せる弱みだ。
そして…おそらくイングランドのそんな表情を見たことあるのは、大昔、まだ攻め入る前のフランスと結婚していた当時の自分くらいだろう。
いったんは失ってしまったこの信頼を二度と失うような真似はすまい…。
そんな思いを込めてスペインは万感の思いを込めて、優しくささやく。
「アーティは今随分身体弱ってもうてるからな。
信頼できる人間に養生出来る家を用意してもろてん。
ここでアーティが元気になるまで養生するんや。
詳しい事は言えん。でも信じたって?
ここに居る間は何があっても親分がアーティの事守ったるし、面倒みたる。
何があっても…ほんまに、絶対や。
命にかえても全身全霊で守ったるから…ゆっくり養生しいや?」
その言葉にイングランドは驚いたように目を丸くして、それからポロリと一粒涙を零してうなづいた。
ああ…本当に国なんて関係なかったのだ。
500年前のあの時だって、こうして国はとにかくとして個人として出来る限りの誠意を見せれば、この子は信じて受け入れてくれたのだろう。
本当に馬鹿だった…と思う反面、今回は絶対に道を誤るまいと、スペインは固く心に誓った。
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