秘密のランチな関係前編_7

最初は昼時に悪友達の誘いを断ったプロイセンが、控室で本人が作ったにしてはありえない可愛らしい弁当を食べていたのを目撃したイタリア兄弟から、プロイセンが彼女の手作りの弁当を食べている…と広まったのがきっかけだった。

そこで悪ノリ大好きな悪友達がそれを聞いて、翌日の昼休みに随行スタッフの控室にイタリア兄弟を伴って突撃してみると、どう見ても本人や弟のドイツが作ることはないだろうと言った感じの可愛らしい弁当を食べているプロイセン。

本人いわく知人が作ったというが、ただの知人がわざわざ弁当を作るとは思えない。

というか、毎日がバレンタインの本命チョコ並みの気合の入りようという弁当をただの知人に作る人間がいたらぜひ紹介してくれと思う。

弁当の提供主がプロイセンの事を好きなのは明白だろう。
そして…プロイセンもよもやそこまでしてくれる相手を無碍にするような性格をしてはいない。

その証拠に、作ってる相手はどんな感じの子なのか、容姿は可愛いのかなどと聞くと、プロイセンは
『ん~、顔はすっげえ可愛いと思うぜ?
ちょっと吊り目がちだが目は丸くてでけえ。
色は白くて口とかちっちゃくて、なんにも塗ってないのに淡いピンク色なのな。
あれってどうなってんだと思う。
いつも俺のあとちょこちょこついてまわるのが、なんだかあれだな、小動物っぽぃっつ~か…』

と、ほうっておくと延々と語ってくれて、日々ナンパに勤しんでるイタリア兄弟の心に秘かに大きなダメージを与えてくれる。

ああ、もうこれはただの知人というのは、このゲルマン男の照れ隠しなのだろうと納得するしかない。

ちなみに…納得の行かないロヴィーノが
「てめえにはこんな手の込んだ弁当を作ってくれる“ただ”の知人がいるのかよっ?」
と、チクリとやりにいったら、ニヤリと余裕な笑みと共に

「あ~、わりい。嘘ついたかもしんねえ。
ただの”知人じゃねえわ。
大事な”知人に訂正な」
と、まあリア充爆発しろと泣きながら逃走するしかないセリフを吐かれて敗走した。

“あの1人楽しすぎるはずの男に可愛い彼女がっ?!!”
と、悪友2人+イタリア兄弟あたりのラテンズは大騒ぎである。

よもやそのラテンズの後ろ姿に
『あ~、面白っ!あいつらウケルっ。マジこれ楽しいな』
と、当のプロイセンが爆笑している事など、彼らは知らない。

ともあれ、それからはとにかくプロイセンの弁当チェック&会議室での報告はラテンズの日課となっているのである。



イギリスも実は一度その報告会の最中に
「クソヒゲにスペイン、イタリア兄弟まで…何か楽しそうだな。何を話してるんだ?」
と聞いてみたことがあるのだが、まあこれもいつもの通り、イタリア兄弟は怯えたように抱きあって震え、それを見たフランスに
「イタリア兄弟が怖がるから坊ちゃん離れててくれる?」
と苦笑されて、輪には入れてもらえなかったわけだが、今までと違って疎外感に落ち込む事はない。

何しろ自分は彼らが何より知りたがっている事実を知っている。
そして…その秘密を共有してくれているのは、彼らの話題の中心にいる人物…プロイセンだ。
彼と秘密を共有しているのは自分だけなのだ、と、むしろ誇らしい気分で何も知らない同僚達の悲鳴じみた会話を遠くから聞いているのだ。




(そっか…あの程度の甘みならOKか…)
もともとジャム系には定評があったのだが、それを応用した今日のデザートのリンゴのコンポートは自分的には会心の出来だったと思う。

万が一でも食中毒など起こさせてはいけないので弁当にはナマモノは入れないのを基本とはしているものの、たまにはデザートでも入れてみたい。

そうは思ったが、加工するとなるとどうしても砂糖を入れないと味がしまらないので、甘すぎるモノが苦手なプロイセンのために、レモンで酸味を増し、シナモンで香り付けをする事にしたのだ。

型抜きしたリンゴをそうやって砂糖と共に煮込んで、冷まして冷凍する。
それを凍ったまま弁当に入れると、丁度良い保冷剤代わりにもなり、ランチの頃には程よく溶けるので食べられる。

このアイディアは料理に無駄を嫌うプロイセンに、きっと後で褒めてもらえる。
そんなことを思うと思わず顔がほころんでくる。

そう…誰もよもや想像だにしていないだろうが、実はイギリスがプロイセンの弁当を作っているのだった。



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