秘密のランチな関係前編_8

「今日のコンポート、あれ良いアイディアだな。
保冷剤にもなるデザートなんて、さすがイギリスだな。
最初は俺の子どもになりてえとか言ってたけど、他の家事は万端だし料理も美味くなってきたし、今はむしろ子どもより嫁にでもなれそうだな。」

キウィの綺麗な緑色の液体をかき混ぜているイギリスの頭をプロイセンがなでてくれる。

“嫁”…“家族”…ああ、なんて温かく素晴らしい響きだろう。
なれるものならぜひなりたい。
いや、ならせてくれ…と、イギリスは切実に思った。

よくよく考えて見れば子どもは唯一ではないが、嫁は唯一だ。
ここ1ヶ月くらいですっかり見慣れた黒いエプロン姿。
カッコイイのにすかした感じが全くなく親しみやすい。
こんな相手とずっとこうして一緒にキッチンに立てたらどんなにいいだろう…。

「そんな事言ったら本気で嫁に来るぞ?」
と言ったのは決して全く冗談だったわけではなく、溢れ出る願望だったわけだが、プロイセンは当たり前に冗談と受け取ったらしく

「おう、いいぜ?もらってやるからいつでも来いよ」
と楽しげに笑って言う。


最初は戸惑った。
そして寂しさからくる勘違いだと思った。
しかし最近はもう諦めと共に認めてしまった。

イギリスはプロイセンに恋している。

プロイセンと一緒にいたいし、プロイセンと色々を共有したいし、プロイセンの特別になりたい。

もちろんそんな事は無理なのはわかっている。
イギリスの側がそうありたいと思ったからと言って、プロイセンの側にそう思ってもらえるような要素が欠片もないという自覚はちゃんとある。

プロイセンはただ優しいだけだ。
一人ぼっちで泣いていたイギリスを放っておけなかった…ただそれだけで、他意はないのだろう。

だから告白など出来るはずもなく、それどころか自分から甘えに行くことすら出来ず、こうやって褒めてもらえるネタを一生懸命探して頭を撫でてもらうのが関の山だ。

それでもこうやって二人で過ごせるのは幸せだった。
このきっかけを作った、自分をいつも話題に入れてくれず落ち込ませた同僚達に感謝したいくらいだ。


今回はイギリスでの会議なのでプロイセンには料理を教えてもらうためということで前日入りしてもらって、イギリスの自宅に泊まってもらっている。
そして今は安かったので大量に買ったキウィを一緒にジャムにしている。

というか…あれ以来イギリスは休みの日はお泊り出来そうな理由を一生懸命探してはプロイセンに進言している。

一人は寂しい…。
そんなイギリスの心情は当然プロイセンも気づいているので、別に理由などなくとも誘ってくれるとは思っているのだが…。



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