秘密のランチな関係前編_3

他人と違う…それは色々な意味合いがあるのだが、この男…ギルベルト・バイルシュミットの違い方は、かなり好意を持たれる系の違い方なのではないだろうか…。
少なくとも自分が女性なら絶賛片思いしそうな勢いだ。

イギリスはプロイセンの家でキッチンに立つプロイセンの後ろ姿を目で追いながら、そう思った。

その日に限った事ではなかった。
イギリスはいつも他の国体から距離を取られがちだ。

まず国体達が楽しげに話しているのに入って行こうとすると、会話を中断され、話題を変えられる。

スペインやアメリカのようにはっきり拒絶する者、イタリアのように怯えて逃げる者、フランスなどはもうイギリスといるのも長いので自分は諦めるが他の人間を巻き込むのは嫌なのだろう。
『あとでお兄さん行ってあげるから、大人しくお家で待ってなさい』などと二次被害を防ごうとするなど様々ではあるが、どちらにしても歓迎される事はない。

唯一、元育て子の英連邦達以外だと昔二国間で同盟を結んでいた日本はそんな一人ぼっちのイギリスを気の毒に思ってくれるのだろう…
空気を読む国だけあって一緒の会議の時はよく声をかけてくれるが、そんな性格だから彼は人気者だ。

アメリカのようにイギリスとは居たくないが日本とは居たいという国がいると、イギリスなんかが独占してしまうのは申し訳ない気がする。

今日もそんな感じで会議後に日本と食事をする話をしていたが、アメリカが来て日本を連れて行ってしまった。

今日は日本と約束していたので一緒に…と声をかけても
『日本がいるのに君と食事なんて行きたくないんだぞ』
と、拒否られた。

先約なのだから…と食い下がる事も出来たかもしれないが、そんな事をすれば優しい日本を困らせる。
なのでアメリカに連れられて行く日本を黙って見送った。

結果、それぞれ親しい物同士で仲良く食事に行く他の国体達と自分一人だけ分かれてまっすぐホテルへ帰るというのもひどく悲しくて、帰宅の時間をずらすため帰り支度に手間取っているフリをして部屋に残った。

こうしてたった一人で何をするでもなく椅子に座っていると、普段賑やかな会議室もシン…としていて、余計に孤独感が増した。

悲しい…寂しい……。

もうどうせ誰もいないのだから…と思って感情のまま泣いていると、誰もいないと思っていた部屋のドアが開いた。

驚いて顔をあげると、そこに立っていたのは主催のドイツの兄、プロイセンだった。

『へ?おまっ…どうした?!何かあったか?!』
駆け寄ってきてそう聞きながら涙をぬぐってくれる手。

相手が自分だからといって、他となんら態度を変えることもなく、まるで他の国体にもそうであるように普通に心配してくれる。

当たり前に、『いつもお前気ぃはりすぎなんだよっ。たまにはに甘えとけっ』と、言ってくれるのだ。


その後事情を話すと話を聞いてくれるという。
それだけじゃない。
自分も今日は片付けで時間が読めない関係で予定をいれていないからと、なんと自宅に誘ってくれた。

1人楽しすぎる男…よくそうからかわれるプロイセンだが、実は友人知人が多い。
亡国になって国として機能しなくなって久しくても、彼の周りにはいつも人がいっぱいだ。

そんな風に皆に好かれ、皆に親しまれているプロイセンにすれば普通の事なのだろうが、イギリスにしたら大事件だ。
会議後に食事どころか、知人の家にお呼ばれだ。
一気にステップアップだ。



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