【学園警察A&A】前編_1

プロローグ


「ちょ~、俺今の学校、気にいってんねん。転校はほんま堪忍してや。」
立派な執務室に呼び出されて、思い切り嫌そうな顔をする男子高校生……。


日本裏教育委員会――それは昨今あまりに増えすぎた非行や虐めを始めとする様々な学校内のトラブルに対応すべく、日本政府が秘密裏に作った組織である。

トラブル対応という、本来望まれる仕事に対応する組織が何故秘密裏に結成されているのか…その原因は、この組織が請け負うトラブルは全て“正攻法”では解決できそうにない問題であること、そして、そのトラブル対応には元問題児であった現役の学生を当たらせていることにある。

そう、この組織は、“解決すべきこと”ではあっても“正攻法では解決できないため”、しばしば“非合法な手段を使っても”解決する、そういう組織だからだ。


そんな裏教育委員長であるローマの所に寄せられた一通の投稿。
それはとある進学校で起こった事件についてである。

私立月陽学園…。
都内では珍しい全寮制で、私立の中では日本有数の進学校だ。
その学校で起こった一つの殺人事件。

それは学園祭の打ち上げでの事だった。
寮の食堂で菓子とジュースを持ち寄って飲み食いしている最中、一人の生徒がいきなり倒れて亡くなった。
死因は毒物死。
犯人と思われる生徒はその後、それを苦に自殺。
事件は後味は悪いものの解決を見たはずだったのだが、その後、自殺した生徒は冤罪を着せられたのだという投書が警察に届き……裏教育委員会にひそかにその調査が依頼されたのだ。

「こんなよおわからん事件には俺は向いてへんやろ?
不良グループつぶせとか、そんなんやったらまだしも…」

事件の概要を聞くと、アントーニョは黒い癖っ毛をガシガシと掻く。

確かに、彼、アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドは元不良――といっても、絡まれやすかった幼馴染をかばううち、腕っ節の強さもあっていつのまにやら不良のトップに祭り上げられてしまっていたという変り種だが――で、少しばかりその方面で有名になりすぎて目をつけられてしまったのを、当の幼馴染の祖父であるローマに引っ張られて働いているのだが、そういう意味では頭脳的なことはあまり得意ではない。
裏教育委員会ではたくさんの学生達が働いていて、単に情報収集、謎解きなら、他にいくらでも適任者はいるはずだ。

「あ~、お前のオツムで事件解決しろとか無茶は言わねえよ。」
苦笑するローマ。

「ほんなら俺は何のためにいるん?」
「ん~、探偵様の護衛…兼、情報収集および雑用係か。」
「え?もしかしてその探偵様って……!!!」
「おうっ、おめぇがヘマして身バレして、強引にうちに引きずり込むことになった坊ちゃんだよ。
坊ちゃんを仕事に入れる時は絶対に自分も入れてくれって土下座したのはおめえだろっ。」
「おっちゃんっ!!!おおきにっ!!!」

アントーニョはパン!と両手を合わせてローマを拝んだ。

「やる気でたか?」
椅子の肘おきに肘をおき、頬杖をついてにやにや笑うローマに、アントーニョはブンッ!!と大きく頭を縦に振る。

「も~めっちゃやる気でたわっ!やる気満々やっ!!」
おっしゃあっ!!と掛け声をあげて浮かれるアントーニョに、ローマは
「これ、お前の設定だから読んどけよ?」
と、一通の封書をピッと投げて寄越した。



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