出来ればこのまま外に出したくない…誰かに会う機会を作ったら、未来のイギリスの子どもの父親に接触してしまうかもしれない…。
それだけは嫌だ。
自分以外が可愛いイギリスと可愛いイギリスの娘に囲まれてすごすなんて事だけは許せない。
それでも…日に日に物も食べずに衰弱していくイギリスを見れば、一度本国へ戻すしかないと思う。
もちろん自分も付いて行って誰も近づかないように見張る事が前提ではあるが。
そんな事を考えながら部屋の前につき、スペインはソッとドアを開ける。
ここ数日は日中でも眠っている事の多いイギリスを起こさないためだ。
目が覚めたら食べるように…と一筆書いた紙をトレイに添えて置いておこうと思って部屋へ足を踏み入れたスペインの手からガチャン…とトレイが床に落下した。
「なにやっとるんやっ!!!!」
思いがけず大声が出た。
いや、そんな事を気にしている場合ではないっ!!
真っ青な顔で思いつめた目で自分にナイフを向けているイギリスに飛びかかるように駆け寄ると、スペインはその細い手首を掴んでナイフを取り上げた。
それを床に放り投げる。
怖くて…何も言葉が出ない。
そこまで嫌なのか?
自分といるのが?
それとも本来イギリスの未来の子どもの父親と一緒になれないのが?
でも…迎えにも来んやん。
助けにも来んやん。
親分やったら絶対に地の果てまででも迎えに行ったる、助けに行ったるのに…。
そんなに親分やあかんの?!
大事に大事に守ったるのに…大切にしたるのにっ!
泣きそうな気分でイギリスの顔をのぞき込んだスペインに向けられたイギリスの言葉は、スペインにとって予想外で…まるで信じられないものだった。
「…嫌ってるくせに…俺のこと嫌ってるくせにっ!!
死んで楽になんのも許せねえのかよっ!!!」
何を言われているのか全くわからない…。
自分が?イギリスを嫌ってる?
いや、それよりも…死んだ方が楽?今の状態よりも?
あまりの衝撃に硬直していると、イギリスはスペインの手を振り払ってベッドから飛び降り、しかし次の瞬間フラリと倒れかかった。
うあっ!とスペインは反射的にそれを支える。
「イギリスっ?!」
と、細い身体を片手で引き寄せると、イギリスは真っ青な顔で苦しげに浅い呼吸を繰り返している。
「イギリスっ、イギリスっ?!どこ苦しいんっ?!!!」
眉根を寄せて苦しそうに目をぎゅっと閉じるその様子に、スペインが聞いても返事がない。
ただ苦痛に身を固くしている。
「ちょっとまってやっ!すぐ医者連れてったるさかいっ!!」
スペインはイギリスを抱き上げるとブランケットに包み、そのまま階段を駆け下りた。
俺はアホや…ほんまアホやっ!!
こんななるくらい嫌な事しといて…
こんなになるまで気づかへんで…
この子になんかあったら俺のせいや…
俺はほんまアホやっ!!!!
田舎町なので重病だったら終わりかもしれない…が、それでも病院に連れて行かないよりはましなはずだ。
涙でかすむ視界の中、後部座席にイギリスをソッと横たわらせると、スペインは車のアクセルを踏み込んだ。
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