眩しい光に一瞬閉じた目を見開くと、何故か息苦しくないどころか、このところの体調不良の不快さや体の重さなど、全てから解放されている気がする。
そして頭上を見上げると眩しい太陽の差し込む海面に、何故かゆらゆらと波間に漂う自分の姿が見える。
――ああ…俺は死んだのか……
ぼんやりとそんな事を思った。
死ぬ…ということは、この半年ずっと覚悟していたことでそれほど恐ろしくも感じなかったが、ただひとつだけ…最期にもう一度だけ会いたかったな…とそれだけが悲しくて、水の中でこぼれた涙は不思議な事に柔らかな色合いの宝石に変わった。
ポロリ…ポロリと海へと散っていく宝石は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、それはまるで光の帯のように薄暗い海底を照らしていった。
その時…
「紙の次は宝石か。
まったく海に色々ばらまくのが好きな困ったお姫さんだな、俺のハサミちゃんは」
と、呆れたような…でも今一番聞きたかった声に振り返ると、会いたかった相手が微笑んで両手を差し伸べている。
――ギルベルト…ギルベルトっ!!!!
ポスン!と勢い良くその広い胸に飛び込めば、しっかりと抱きしめて、頭を撫でてくれる。
「海の国については上に知られると色々問題があるっつ~か…要らない諍いを呼ぶだけだから説明も出来なくて悪かったな。
ま、とりあえず城に向かうぞ。」
抱きかかえられるまま、アーサーがギルベルトの首につかまると、ギルベルトは一路、海の底へと泳いで行った。
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