ぺちぺちと軽く頬を叩かれる感触で目が覚めた。
「…?…ルート?」
ぼ~っと見上げると、見慣れた端正な顔が少し呆れを含んだ表情をみせる。
膝には何故か海に落としたはずのハサミと大きな海藻のようなモノを折って作られた可愛らしい魚。
それで思い出した。
確か落としてしまったハサミを追って海へ飛び込んだはずだ。
もしかして…ルートが気づいて助けてくれたのか…。
「お前が助けてくれたのか。」
自分にも気にかけて助けてくれる相手がいる…それが嬉しくて笑みを向けると、ルートは戸惑ったように首をかしげた。
「何を言ってるのだ。俺はたまたまここを通りがかって眠りこけているお前をみつけただけだ。
それより昨日はお前がいきなりいなくなってちょっとした騒ぎになっているから、早く伝えてやらなければ。」
と言うその目は嘘を付いているようには見えない。
「俺は…はさみを海に落としてしまってそれを拾おうと海に飛び込んだんだが…」
と、それでも諦めきれずにつぶやくと、アーサーを助け起こしたルートは
「そんな小さな物を海に落として無事回収できるなんて、さすがだな」
と、大まじめに返してくる。
どうやら本当にルートがハサミを回収して助けてくれたわけではないらしい。
まさか…無意識に自分で回収してここまでたどり着いたのか?
首をひねりながらもアーサーはルートに続いて城へと戻っていった。
脳内にかすかに残る…自分を抱える力強い腕も、泣きてえならガキなんだから思い切り泣けよ…という言葉も、自分の願望が見せた幻だったんだろうか…そんな事を思いながら。
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