明かされる事実と仏憫のピンチ
全員同じホテルに泊まっているだけに連絡をつければ集まるのも早い。
おそらく眠っていなかったのだろう。
プロイセンはすぐに来た。
そして何故か日本も……。
「お前も寝てなかったんだな。じゃ、早く連絡つけりゃあ良かった。」
と開口一番そういうプロイセン。
「お前こそ。つか、日本も起きてたのか…。」
二人を招き入れて早々にドアを閉めてソファにうながしながらそう言うロマーノに、何故かカメラ持参の日本は
「心の嫁イギリスさんの大事に爺だって眠ってなんかいられません。
ところで…スペインさんとは上手くいったんですよね?
あのKYまさかこんな時にイギリスさん置いてどっかに行ったりしてませんよね?」
と、珍しく殺気立った目でそう詰め寄ってくる。
……行ってます…とは言い難い雰囲気だ。
「あの…な、なんでスペインとの事知ってんだよ?」
自分に言いたくない理由があれば相手を叩け…先手必勝とばかりにロマーノが聞くと、そこでプロイセンが間に入って口を開いた。
「いや…元々ターゲットはスペインだったらしいぞ。」
すでに事情を聞いているらしい。
話せ、と、うながすと頷いて続ける。
「まず元々イギリスはスペインに片思いしてて、日本がエイプリル・フールを保険に告白を進めたのはホント。
でも余計に嫌われるだけだとイギリスが渋ったから、今度はじゃあスペインがライバル心いだきそうな相手を好きなふりをして競争心を煽れと言ったらしいんだな。
自分が上手く炊きつけてやるからと。
で、炊きつけられたのがお前だ。お兄様。
日本は元々スペインもイギリスの事好きだったの気づいてたらしいぜ?
で、焦らせれば告るんじゃねえかと、考えたわけだ。」
「じゃあ…別にフランスの野郎を好きだったわけじゃねえんだよな?」
「ええ。…というか、見てわかりませんでした?
イギリスさん、仕事では実に華麗に嘘をつかれるのに、プライベートになると本当に正直な方でいらっしゃいますから…。
肩とか抱かれた時に怒りで顔を染めてプルプル震えていらしたので、バレてしまわないかとヒヤヒヤいたしましたが……」
ああ…あれは照れてたわけじゃなく、怒りで赤くなっていたのか…と、ロマーノは今更ながら昨日の様子を思い出す。
――まあ…確かに惚れた理由がメシが美味いのと殴っても心が痛まねえからって…いくらイギリスでもありえねえよな…。
同じく当日の会議の様子を思い出したらしいプロイセンが苦笑した。
まあ確かにそうだよな…とロマーノも苦笑する。
とりあえずこれでスペインが暴走の挙句無理矢理襲ったわけではないことは明らかになって、土下座の心配は消えたわけだ。
その事にロマーノは心底ほっとする。
さすがに…元親が同性相手の性犯罪者とか嫌すぎる。
「じゃ、これで一安心だな。」
と、プロイセンは同じくホッとした様子だが、そこで日本がニコリと最初の質問を繰り返す。
「で?スペインさんとは上手くいったんですよね?
スペインさんはどちらに?」
うあ~~忘れてたっ!!!
その言葉にロマーノは一気に大変な諸問題を思い出した。
「いや、実はさ、スペインの奴、フランスの野郎がイギリス様振ったんだって誤解したまんまなんだよ!!」
「へ?お前誤解を解いてなかったのか?」
「いや、だって呼び出されたらいきなりイギリス様がスペインのベッドで寝てるなんて急展開で…俺イギリス様も奴の事好きだなんて知らなかったから、もしかしてあいつが暴走の末襲っちまったのかとか色々考えてて……」
「で、まあそのへんの説明はあとで聞く。
スペインはどこだ?」
「……フランスんとこ……」
「あぁああ~~!!!マジかよっ!!!!フランスの奴殺されるんじゃねっ?!!」
とたんにプロイセンも慌てるが、日本は1人ため息をつく。
「あの人は…。フランスさんの事なんて後でいいじゃないですかっ!
こんな時にイギリスさんの側にいないでどうするんですっ。
目が覚めてスペインさんがいないと知ったら、あの悲観的な考え方をするイギリスさんがどれだけ落ち込まれるか…」
心配するのはイギリスのメンタルだけで、フランスの安否はどうでもいいらしい…。
「いや、だからスペインも速攻でフランス潰して戻ってくるつもりで、それでも万が一間に合わなかった時のために俺を呼び出したんだ。
メモとかだとイギリス様が落ち込むだろうけど、身内第一のスペインだから俺をメッセンジャーに残せば、イギリス様のためにフランス潰しに行ってるっていうのも信じてくれるんじゃねえかと…。」
「気遣いはわかりますが…何故そんな無駄に……」
――あ~~!!!!二人共黙れっ!!!!!それどころじゃねえだろっ!!!!
言い合うロマーノと日本に、プロイセンが声を張り上げる。
「イギリスはスペインじゃねえけどお兄様が事情話せば信じるだろうよっ!
自分のためにフランス殴りに行ってるって言われりゃあ自分が蔑ろにされてるとは思わねえっ!
それより早くフランスに知らせねえとあいつマジ潰されるぞっ!!!」
「あ、そうだった…。」
そこでロマーノは改めて思い出した。
「ちょっと待っててくれ。逃げるように電話する。」
ロマーノは即携帯を取り出す。
呼び出し音を鳴らしてもなかなか出ないので、もしかして手遅れだったか?!と思った頃、
『もしもし?え?ロマーノ?珍しいな』
と、フランスはどうやら寝起きらしい間延びした声で電話に出た。
とりあえずまだ無事な事にホッとしつつも、ロマーノは焦って言う。
「いいから、今すぐ逃げろっ!殺されたくなければすぐ逃げろっ!」
こうしている間にもスペインが辿り着くかもしれない。
しかしこちらは全く危機感を持っていないフランスは
『へ?』
と、全く動く様子がないどころか、
『あ、ちょっと待っててね。誰か来たみたい』
と言い出す。
それって…まさか……
「うあぁあああ~~!!!馬鹿野郎っ!出るなっ!!窓から逃げろっ!!お前殺されるぞ!!!」
ロマーノの悲鳴混じりの言葉に、ようやく事態の深刻さに気づいたらしい。
フランスは
『え?!何っ?!何が起こってるのっ?!!』
と、慌て始める。
「いいから逃げろっ!!とりあえず…今からこの電話切って俺が電話で時間稼いでやるから、その間に逃げろ!」
そう言ってロマーノは即電話を切り、今度はスペインの携帯に電話をかけた。
そうしておいて、スペインが電話にでると、日本に即変わる。
――え?爺ですかっ?!
――日本の方が説得力あんだろっ!
――スペインさんの事ならロマーノさんの方がよくわかるじゃないですかっ!!
『あんな~、親分忙しいねん。急用じゃないならあとでなっ』
「あ~~待ったぁ!!!」
押し付けあう日本とロマーノからロマーノの携帯を取り上げたのはプロイセンだ。
「あのな、お前優先順位考えろっ!
フランス潰すのなんていつでも出来んだろっ?!
でも初めて思いを通わせた朝にイギリスの側にいないなんて、ありえねえぞっ!!
理由を聞いて信じて納得できたとしてもだ、初めての朝っつ~のは二度と来ねえんだからなっ!!」
――…師匠……爺は師匠を見直しましたよ。
――お前、自分は1人楽しすぎる男のくせに、意外に気の利いた事言うな…
二人がそれぞれつぶやき、そして最後にスペインが
『プーちゃん…DTの癖にええこと言ったわ。親分これから急いで帰るから。』
と電話を切る。
「DT関係ねえだろぉ~~!!!」
と電話に向かって叫ぶプロイセンの声は当然スペインには届かない。
が、とりあえずフランスの危機は去ったらしいと、3人はホッと安堵の息をついた。
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