罪作りなエイプリル・フール_2章_4

情熱の国-愛の暴走


――ありえないでしょ~。なんで麗しの世界のお兄さんが金色毛虫ちゃんと…
ホテルまでの道を急ぎ走りながら、先刻の悪友の言葉にスペインは思う。

ああ、ホンマにありえへんっ!
あの可愛い可愛いイングラテラとあのクソ髭なんてどうやったって釣り合えへんやろっ!!
それでもきっと傷ついて泣いているであろう可愛い想い人に会いに、スペインは店を出てまっすぐホテルへと向かっている。

普段なら傷ついている時に自分みたいに嫌っている人間に会いたくないだろうとか、そんな見当違いの自制が働くのだが、今は大分酒も入っているせいで、そんな思考力が吹っ飛んでいる。

ただただ泣いているあの子を慰めなければ…と、そんな気持ちに従ってスペインは行動していた。


部屋番号は昨日ロマーノが日本からさり気なく聞き出してくれていたため、知っている。
ああ、自分には過ぎるくらい出来た子分に本当に感謝だ。


フロントでまず自室の鍵を受け取ってそれをポケットに放り込むと、しかしスペインはそのままイギリスの部屋までエレベータが来るのも待てずに階段をかけあがった。

部屋の前に着いてドンドンとドアをノックすると、すぐドアが開く。

――…日本…ダメだった……

どうやら日本と勘違いしていたらしく、泣きすぎて目を真っ赤にしながら紡がれる小さな声が可哀想で愛おしくて、スペインの方こそ泣きそうだ。

もうほとんど無意識に、ドアの向こうに立っていた人物が自分が思い描いていた人物と違って驚きに目を丸くしているイギリスの腕を取ると、もしかしてこちらに来てくれるように呼んでいるのかもしれない他の人物が来ないうちにと、スペインはその腕を取り、同じ階にある自分の部屋へとずんずん引きずっていく。

「え…?す、スペイン…なんでっ?なに??」
突発事項に弱いのか、イギリスは驚きながらもたいして抵抗もできないまま引きずられた。

それをいいことに自室の前に来て鍵を出し、そのまま自室へイギリスを先に入れ、自分も入るとドアを閉める。

「…あ…の……スペイン?」
まだ涙の乾かない子どものように丸く大きな目で見上げられれば、もうダメだった。

――親分にしとき……

ぎゅうっと抱きしめて耳元に囁くと、朱に染まる耳。

ああ…かわええ…。

ずっと夢に見続けてきたのと、アルコールが入っている事もあって今ひとつ現実感がなく、その現実感のなさが、スペインを大胆にする。

赤くなった目尻にちゅっと口づけをおとすと、スペインはそのペリドットを覗きこんだ。

――親分なら…絶対に自分に悲しい思いさせたりせえへんよ?…親分を選んだって?
出来る限り優しい声でそう囁いたあと、

嫌なら…殴ってでも蹴り飛ばしてでも抵抗し…?
と、ゆっくり猶予を与えるように顔を近づけていくが、イギリスはまん丸の目を見開いて硬直したままだ。

そうしてイギリスの柔らかい唇にかすかに触れる感触がすると、身体がか~っと熱くなった。

そのまま強く自らの唇を押し付け、震える歯列を割り開いて舌をイギリスの口内に忍び込ませると、そこで初めて硬直していたイギリスの身体がビクンと跳ね上がって、手が弱々しくスペインの身体を押しのけようとする。

そんな抵抗のうちにも入らない弱々しい抗議にスペインは小さく笑って、逃げられないように片手をイギリスの腰に、もう片方の手をイギリスの後頭部へと回す。

…んっ…んぅ……

一生懸命スペインの身体を引き離そうとポスポスとスペインの胸を叩き続ける小さな抵抗が可愛らしくて仕方ない。

逃げる舌を追いかけて絡みとり、思いのまま絡ませ、夢見心地で甘い唾液をすすり上げた。

こうして口内を思う存分味わっていると、カクンとイギリスの足から力が抜けて崩れ落ちそうになる。
それを慌てて支えて、スペインはようやく唇を放した。

…ふぁ……

と足りない息を補給するようにポカンと小さく開けた口が…そこから覗くピンク色の小さな舌が…潤んだ大きなグリーンアイが…イギリスの全てがスペインを煽る。

――…いきなり……なに…すんだよ……ばかぁ……

涙目で上目遣いで言われても全く迫力がない、可愛いだけの抗議。

――堪忍な…?
スペインは今度はチュッと軽くその可愛くない事を語る可愛らしい唇に触れるだけの口づけを落とし、それから息苦しさに涙がたまる目尻に唇を寄せてそれを吸い取った。

ひゃ…と小さい声を上げ身をすくめるイギリスがスペイン的にはもう耐え切れないほど可愛くて、崩れ落ちないように支える腕に力を込めて近くに抱き寄せた。

――ずっと…初めて会うた瞬間から好きやったんや…。
自分が親分の事嫌いや言うのはわかっとるんやけど、気持ちが抑えきれへんかってん。
…もう…あかんわ…。堪忍な…親分は自分のこと愛したい…。止められへん。
親分の全身全霊をかけてめっちゃ大事にしたるし、自分の事傷つけるような輩からは何が起こっても守ったる。
なあ…だから諦めたって?親分に…愛されたって?
さきほどのように拒絶できる時間も与えず、スペインは再びイギリスの唇に口付けて割り開き、思い切り貪りつつ、力の入らないその体を抱き上げて奥のベッドに向かう。


そして壊れ物を扱うようにソっとイギリスをベッドに下ろすと、逃げられないようにその上に覆いかぶさった。

――ほんま…堪忍な……でも嘘やない…めちゃくちゃ大事にしたる…。ほんま大事にするからな?
怯えの走るイギリスの目元に軽く口づけを落として、そのあと深く口付けながら、スペインは夢にまで見たその白い身体を暴いていく。


――怖い……怖い……

途中何度も泣かれてその都度手を止めて、出来うる限りもっとも優しい口づけを落として、

――怖ないよ?……愛したいだけやねん……優しくするからな?
と、頭をなでながら宥め、イギリスの快楽を探っていった。

しかし怯える心とは裏腹に敏感な質ならしいその白い身体はすぐに気持ちよさを拾い始める。
すると今度は羞恥と快楽の狭間で泣くイギリスはとてつもなく甘美で可愛らしかった。

――親分、自分が気持良ぉなるようにしとるんやから、恥ずかしないよ?
感じとるときの自分、めっちゃ可愛ええで?泣かんといて?
もう目が一緒に溶けてしまうんじゃないかと思うくらいポロポロ泣くイギリスが愛しくて愛しくて、自然スペインの声も砂糖を蜂蜜に混ぜたくらいドロドロに甘くなる。

身体と一緒に心も開いてくれるように…と、長い人生の中でこれ以上ないくらいゆっくり時間をかけて大事に大事に触れていき、なんとか身体をつなげた時は、今この瞬間に殺されてもいいとさえ思うくらい幸せな気分になった。

その頃にはもうスペインの手でトロトロに蕩かされてしまったイギリスは小さな可愛らしい嬌声を聞かせてくれて、それが今まで聞いたことのない最上の音楽のように耳に心地いい。

ああ…楽園や……と、思わず口からこぼれ出た言葉を聞きとめて、イギリスがまた涙をこぼした。

――…俺……お前のこと…気持ちよく出来てるか?
大きな瞳が不安げにきいてくる。

――もう…自分親分の事萌え殺すつもりで言っとるんか?そんなかわええ事言われたらもう我慢できひんやん。

1000年近くも片思いしとる子ぉと身体繋げて気持ち良ぉないわけないやろ。
ああ…もうあかんっ!ゆっくりしたろ思うてたのに可愛すぎて我慢できひんっ!!
そう叫ぶなり激しさをますスペインの動きにイギリスは悲鳴をあげてのぼりつめた。

スペインがそれを追うように上り詰める感触に小さく身を震わせて、意識を手放してしまったイギリスを綺麗に清めてベッドに寝かせてやって、自分もその後シャワーを浴びて着替えると、スペインはロマーノに電話をかけた。





0 件のコメント :

コメントを投稿