乙女ジャーナル編集部-青い大地の果てにあるものGA番外

予告通り、支部のメッセで頂いたご報告を元に【青い大地の果てにあるもの】内のモブ子さんのお話を書かせて頂きました。

本編にいれてしまうか別途番外に書くかはケースバイケースですが、誰でも何度でもお気軽にコメントやメールやメッセでキャラや報告などで遊んでやって下さい(*゜―゜)ノ




「エリザさんっ!大変ですっ!!!」

それは女性のジャスティス専用に用意された談話室。

男子禁制、安心安全……本部は女性自体が全体のおよそ1割にも満たないのもあり、一般女性ならそんな性差による身の危険を避けるためと言えるのだろうが、ジャスティスは違う。

正直…エリザ1人でブレインどころかアントーニョが加わらなければフリーダムすら壊滅させられるのではないだろうか…と思われるほど強い。

では何故そんな男顔負けの女性陣が大人しく女性専用ルームに籠っているのか…

【ブルーアース乙女ジャーナル編集部】

その答えとなるこの看板は、ドアの廊下側ではなく、ドアの内側についている。
つまりそう言う事だ。

ブルーアース内の男性情報を有志でこっそりかき集めて、組織内の女性の娯楽のために雑誌にする…そのためにこの部屋は使われているのだ。

最初は単にイケメン男性部員についての情報を載せることから始まったこの雑誌も、今では編集長であるエリザの趣味を色濃く反映して、カップル情報中心になっている。
もちろん、そのカップルの前には“男同士の”という一言がつくのだが…。

室内は続き部屋になっていて、1室は編集部。

部屋の最奥に編集長であるエリザのデスク。
その両端には梅のデスクともう一つ空きのデスクがあったが、そこには今回本部に転属してきた桜が座る事になった。

そう、彼女も極東にいる頃からせっせと本部に情報を送り続け、そして自らも出来上がった雑誌を送ってもらって愛読していた読者の1人でもあったのである。


その他にもいくつか並んでいるデスクは本部のフリーダムやブレインなどの各部署内の乙女たちの代表者用のデスクで、その他には誰でも使用可なデスクがさらにいくつか。

ここで編集会議も編集作業も原稿作成も行われ、原稿はそのまま隣の印刷室で印刷され、希望する乙女達の手元へと配布されて行くと言うしくみである。


これまではもっぱら、それぞれ最近就任した各部署の若きイケメン長達や、男性ジャスティスの特集や、妄想込みのフリーダムなどのカップル情報、それに常に一緒に出動するルートとフェリシアーノの萌え目撃情報などが中心だった。

が、ここに来て極東から後衛ジャスティスのアーサーが転属してギルベルトとコンビを組むようにとのロヴィーノの指示があったことから、今ギルアサが熱い。
ギルの親しい幼馴染のエリザとアーサーの親しい幼馴染の桜が揃っている事もあって、余計に…である。

「とりあえずロヴィはよくやったわっ!」
「だネ!そろそろルーフェリに続く大型カップルが欲しいとこだったしネ!」

「本当に…。わたくしではアーサーさんをお守りしきれませんし、お館様なら大事な大事なアーサーさんをお任せしても守って下さるでしょうからアーサーさんも幸せ、わたくしを始めとする乙女ジャーナルの乙女達も幸せに…。
ああ、なんて素晴らしいんでしょう…」


極東組就任後数日…ジャスティスの女性三人組は編集部に集結。
桜の土産の八つ橋を茶菓子にお茶を飲んでいる。


「エリザさんも桜ちゃんも2人の最初の出会い、聞いたネ?」
という梅の言葉に、
「ええ、もちろん!ギルから聞きだしたわっ!」
と大きく頷くエリザと
「わたくしはエリザさん経由で……」
と緑茶を啜る桜。

「それ、今あたしまとめてますっ!」
と、その3人にデスクでキーボードを走らせていた編集者の1人が片手をあげた。

「受けちゃんを襲う悪漢から受けちゃんをかばって戦う攻め……
もう、どんだけ少女漫画なんですかっ!
ギルベルトさんてすごいイケメンだし、アーサー君めちゃ可愛いし、本当に少女漫画そのものですよねっ!
本当にその場でそれみたかったっ!!
成敗されるフリーダム役でも良いから現場に居たかったっ!!!!!」

ガン!!とデスクに頭を打ちつけるその乙女はフリーダムの部員。
――極東フリーダム部員、何故あたしにも声かけなかったんだ?!
と叫んでいる。

「でも襲撃した部員達、その後、全員連座でアントーニョさんの鉄拳くらったらしいですよ?」
と、言うのは医療本部組。

「そそ、大勢だったし手当て大変だったよねぇ…」
と、仲良く八つ橋を齧る。

しかしそんな怪力で有名なフリーダム本部長の鉄拳も乙女の心までは砕けないらしい。

「…アントーニョ本部長の鉄拳………そ…それは…」
「それは?」
「ある意味、我々の業界ではご褒美だよね…?」
と、割合と真剣な顔で言う肉弾系フリーダム部員の言葉に、医療本部のお嬢さん達は肯定も否定もあえてせず、苦笑いを返した。


「まあ…私達は自分が痛い目には合わない方向性で萌えを堪能したいかな?」
と、そこできらりと眼鏡を光らせて参戦するのはブレイン部員のお嬢さん。

「その後のお泊まりに関しては桜さんのお手柄でしたよね。
そちらで進展はなかったんですか?」
と、転属初日、桜の口添えでギルベルトの部屋にアーサーがお泊まりイベントなどと言う、腐女子としては見逃せない一幕を、本部当直で見逃した彼女が問うと、それにはエリザがグッと親指を立てる。

そして凄い勢いで
「ストーカー砂田がやってくれたわっ!
彼、本当に良い仕事してるっ!!
奴はアーサー君の部屋に忍び込んで待ち伏せて、アーサー君の悲鳴でかけつけたギルに剣突きつけられて自分の方が逃げだし……
その後、怯える受けちゃんをお慰めはお約束よねっ!!
いくら無粋なギルでも抱きしめてキスくらいはしてるはずっ!
ええ、してくれないと困るわっ!!」
…と、もうどこまでが真実でどこからが妄想なのか、今ひとつわからない情報を披露した。

そこに事実だけを述べるのは桜。

「まあ…キスしたかどうかは別にして…同じベッドで寝た事は確からしいです」
やっぱりずず~っと緑茶を啜りながら言う桜の言葉に、部屋中からきゃあああ~~!!!!と悲鳴があがる。

「あれよねっ?!絶対にギルベルトさん腕枕よね?!!」
「それはもう絶対よっ!!落ちつかないアーサーさんに『心臓の音聞いたらよく眠れるって言うぜ?』とか言って、自分の胸元に抱き寄せちゃったりしたのよっ、絶対っ!!!」
「あ~どうせなら『どこの誰かわからないような輩に奪われるくらいなら、初めてはお前がいい…』とかいう展開になっててくれないかしら…」
「それいいっ!!!採用っ!!!!!」
「いやいや、しばらくは大切すぎて手が出せずにモンモンとするギルベルトさんを楽しみたい」
「あー、それもそうね。すぐ手を出すより、手を出したくて出せない期間を見てたいよね」
「そんな気はないのにギルベルトさんの男心をくすぐっちゃうアーサーさんと、アーサーさんはそんなつもりで言ったりやったりしてるんじゃないから…って必死に耐えるギルベルトさん萌え…」
「惚れた相手と同じベッドで、しかも相手はくっついてきちゃったりとか、もうどんだけ拷問とか思いつつ、でもアーサーさん起こしちゃうからって動けなくて眠れないギルベルトさんとかも良い…」

と、しばらく口々にみたいパターンを語り合っている乙女達。
妄想は続くよいつまでも…という雰囲気だったが、そこでふと現実に戻る知性派ブレイン。

「でも…結局どこまでいってるんですか?
ギルベルトさんが好意を持っているのは確かですよね。
別に私生活全般まで面倒みる義務はないのに見てるし、エリザさんに促されたとはいえ、恋人宣言してますしね。
でもアーサーさんの方は?
ストーカー対策要員というのを別にして、ギルベルトさん自身好きなんでしょうか?
いや…別に実際は恋愛感情なかったとしても、妄想でカバーはしますけどね?
そのあたり知っておきたいと言うか…知的好奇心?」

「…それ…ちょっと違う。
妄想的好奇心…じゃない?」
「確かに…」

「まあ…確かにアーサーさんもギルベルトさんを確かに愛してるって信じてるけど、証が欲しいのが腐女子というとこですね」
「うんうん。これで変な女とかとくっつかれたら、まじへこむ」

2人がくっつかないならくっつかないで妄想でカバーはするが、他とくっつかれると辛い…
さきほどの盛り上がりが嘘のようにしょ~んとうなだれる乙女達。

急に静かになった部屋に響く廊下の足音。

「エリザさんっ!大変ですっ!!!」
と、開く編集部のドア。
USBをかざす乙女1人。

「なに?どうしたの?!」
と、明らかに普通でない様子の乙女にエリザが立ち上がると、乙女は部屋にかけこんで、エリザの元まで行って
「あの方からの情報ですっ!!」
とかざしていたUSBを差し出した。

「…あの方?」
こてんと不思議そうに小首をかしげる桜。

それに対して梅が
「もしかして…特派員Nさん?!」
と問うと、
「ですですっ!伝説のモブ子特派員Nさんですっ!」
と、乙女は大きく頷いた。

「伝説の…モブ…子?」
ますますわからないと言った様子でさらに首をかしげる桜。

その様子にブレイン代表が
「それは私が説明いたしましょう」
と、どやあっと立ち上がった。

「この乙女ジャーナル編集部では世界各国の支部の乙女達からイケメン情報を集めているのは周知の事実ですが、その中にあってですね、実にピンポイントに美味しい情報を匿名で送って来て下さる方がいるんですよっ。
どこの誰だかは名乗らない。
でも…
ある時は過酷な現場で束の間のシェスタを楽しむアントーニョ部長、
ある時は街の雰囲気あるバーでワインを傾けるフランシス部長、
そして…なんと嬉しそうにルートさんにパスタをアーンで食べさせてもらってるフェリちゃんの写真まで、
どうやって撮った?!何故誰にも気づかれずに撮れた?!くらいの勢いのベストショットを送って来て下さるので、きっと自分の気配を消す術に長けているか、いるのが別に不自然じゃないくらいその現場に馴染む事ができるモブ子中のモブ子であらせられるのだろうという敬意を込めて、右に出る者のいないモブ子…そう…全モブ子、obukoの右、様とお呼びしようと言う事で、特派員Nのコードネームで呼ばれるようになったのです」

どやや~ん!と指先で眼鏡を直しながら胸を張るブレインの乙女。

「…なるほど……」
と、頷く桜。

「ということで…今日はどんな情報なのかしら」
と、うきうきと受け取ったUSBを自分のPCに差し込むエリザ。

部員一同
――ありがたくいただきます…
と、そのUSBに対して合掌。

傍から見ると何かの配給か宗教団体のようだが、そんな彼女達の感性の外にいる外部の人間はここには居ない。
だから誰もその光景に疑問を抱かない。
…どころか、萌えを供給してくれる相手は神様だとでも主張しかねない勢いである。

おおーーー!!!!すばらしいっっ……
バン!!と机を叩いてエリザはしばらく絶句。

全員が食い入るように彼女を見ている。

「…いま…送る…。
共有ディスクに…落とすから、各自見て……」
というエリザの言葉に、全員が無言で、バッと自分のPCに張り付いた。

そしてしばらくは自分のPCを凝視する乙女達。
カチカチと言うクリックの音だけが静かな室内に響き渡る。

「…むり……し…ぬ……」
やがてぽつりと漏れる呟き。

「…やばい…やばい…やばい……」
「N様…N様…N様……」
「…神…あなたは神か……」
危ない目をした乙女達の声が室内に充満した。

共有フォルダに溢れかえるジャスティスの写真…。

天使の笑みでアーサーと手を合わせるフェリシアーノと、戸惑った表情も可愛らしいアーサー…
半泣きのアーサーの顔を心配そうに覗き込むギルベルト…
アーサーをお姫様抱っこしたまま鍛練室の入口に着地した瞬間のギルベルト…
座ったギルベルトの足の間に座って、ギルベルトが首にかけているタオルで自分の汗をふくアーサー…
指先でギルベルトの鼻の頭を突いて悪戯っぽく笑うアーサー…

もう一面ギルアサで溢れかえる。

中には何故か外で、おそらく出動中なのだろう。
戦闘服のまましゃがみこんで泣いているアーサーの前にしゃがみこんで心配そうにその顔を覗き込んでいるギルベルトなどという、どうやってそれを撮ったんだ?と思われるような謎の写真まで入っていた。

そんな中で説明付きの一連の写真。
・テーブルにさりげなく置かれたカレンダーにルートさんの誕生日と書かれた赤い印。
・それを見るフェリシアーノ。
・その横には地図と花畑の写真。
・それを手に取るフェリシアーノ。
・そして…アーサーにそれを見せているフェリシアーノ。
・なにやらバッグを持ったアーサーの手を引いて歩くフェリシアーノ。
・花畑で花を摘む2人。
・嬉しそうに花冠を掲げるフェリシアーノ。
・基地内。満面の笑みでルートに綺麗にリボンで飾り付けた花冠を載せるフェリシアーノと照れるルート。
・同じく基地内。赤い顔をしてギルベルトに花冠を突きつけるアーサーと、ビックリした様子のギルベルト。
・花冠を載せて笑うギルベルト。


拝啓 エリザ編集長

大変ご無沙汰しております。
本部もアーサーさんがいらしたことで、ルーフェリに加えて今後はギルアサも堪能できるようになり、楽しみも増えてまいりました。
ということで…ただ成り行きを拝見させて頂くだけでも十分ではございますが、少しばかり楽しませて頂ければと、今回は細工をさせて頂きました。

ということで、上記の一連の写真についての説明です。

まずフェリシアーノさんの眼につくところに、翌日ルートさんの誕生日である旨と花畑の花が満開で美しいですよ?との言葉を添えた上で地図を配置。
フェリシアーノさんはいつもルートさんと一緒ですが、今回はサプライズと言う事でアーサーさんとご一緒してみてはいかがでしょう?と言う一文も追記。
フェリシアーノさんは疑う事を知らない方なので、アーサーさんをお誘いしてお二人で花畑へ。

アーサーさんは花束にするものと思われたようで飾り用のリボンを持参。
結局2人で花を摘んでいるうちに花冠を作り始め、それをプレゼントする事に。

「どうせならさ、アーサーもせっかくだしついでにギルにあげようよ」
と、フェリシアーノさんグッジョブ!

フェリシアーノさんはアーサーさんにしおれたりしないように魔法をかけてもらった花冠をルートさんにプレゼント。

「…感謝する…が、花冠ならお前の方が似合いそうだな」
と照れながらおっしゃるルートさんに、
「じゃあ今度はルートが一緒に行って、俺のために作ってくれる?」
と天使の笑顔のフェリシアーノさん。
こちらはもう、恥ずかしくなるくらい甘々でございました。


そして…時を前後いたしますが、花畑へ行ったその足でギルベルトさんの元へ向かうアーサーさん。

「ルートのためにフェリが花冠作るっていうから、教えるついでに作ったから…お前にやるっ!」
と恥ずかしさに真っ赤になって半分涙目の上目遣いとか、もうなにそれ誘ってますか?という風情のアーサーさんから花冠を押し付けられて、硬直するギルベルトさん。
これ脳内で理性と本能が戦っていらっしゃるとみました。
しかし悲観主義者のアーサーさんが泣きだす前に我に返るのはさすがです。
すぐそれから形が崩れないあたりの花を一本手折り、花冠はご自身の頭に乗せて『ありがとなっ。これでおそろい』と、手折った花をアーサーさんの髪に挿されて微笑まれてました。

この反応を見る限り、アーサーさんも利便性だけではなくギルベルトさんに好意をよせていらっしゃるものと思いますので、皆様の支援でより一層お二人が寄りそわれる様を拝見出来る事を心より願うものでございます。

敬具


全員無言で涙だ。
尊い…尊い…と、その言葉だけがお題目のように室内に流れる。

「N様のご尽力…全乙女に報告しなければっ!
ええ、私にはその義務がありますっ!!」
グイっと涙を拭いてガバっとPCに向かう乙女達。

こうして今日も乙女のための秘密の雑誌、【ブルーアース乙女ジャーナル】は作られて行くのであった。


【青い大地の果てにあるもの】参加者モブ子さん募集詳細


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