「あ~!ギルにアーサー、おはよっ♪
これからご飯?一緒して良い?」
と、入口のところでルートの腕にぶら下がるようにしてしがみついていたフェリシアーノが駆け寄ってきた。
「ああ、フェリちゃんにルッツ、グーテンモルゲン。
タマ、一緒しても良いよな?」
と、それに手を軽くあげて返すギルベルト。
そのギルベルトの問いにアーサーが答える間もなく、
「ね、アーサーはどんなもの好き?
ここの食堂はね~色々美味しいんだよ~」
と、フェリシアーノがふわっとアーサーの手を取って食堂へ引っ張って行ってしまう。
「フェリちゃんは相変わらず人懐っこいよな。
タマが人見知る暇もねえ」
と、それは止めずに小さく吹きだすギルベルトに、ルートはやれやれと小さく頭を横に振りつつ
「同じ後衛で趣味が合いそうな相手が来たと喜んでいたからな。
それにしても相手の話を聞かなすぎだ」
と、ため息をついた。
「俺ね、フェリシアーノだよっ。フェリって呼んでね?
昨日も会ったけどね、自分の口でちゃんと言う暇がなかったから。
今日は会ったらよろしくって言いたくて楽しみにしてたんだぁ~」
と、口を挟む暇もない勢いでおしゃべりを続けるフェリシアーノ。
アーサーは実は極東支部ではフリーダムに嫌われていた事もあって、女性は平気でも相手が男だと酷く緊張をするのだが、フェリシアーノはどうにもふわふわと愛らしくて危害を加えられる気がしてこない。
「ああ、フェリも確か後衛だよな?
後衛同士だとあまり組む機会もないかもしれないが、一緒の時はよろしくな」
と、返すとフェリは腕をぎゅーっと掴みなおすと身を寄せて
「戦闘だけが生活じゃないからねっ。
美味しいもの食べて楽しい事してって普通の生活の中で一緒に過ごせばいいよ」
と、ぴょんぴょんと跳ねるように食堂へと誘導した。
こうして2人揃って後ろのバイルシュミット兄弟に先んじて食堂に入って行くと、
「おい...あれ見ろよ!あれ!」
「フェリちゃんと...もう一人は?すっごい可愛い子じゃん」
「あー、アーサー君よっ。極東支部から来た…」
「かっわいいなぁ...二人揃うと10倍可愛い!」
「天使だよな、天使」
などなど、男性も女性も口々につぶやき、食堂内に一斉にざわめきが広がった。
なにしろ女性が少ない本部の事だ。
まだ少年ぽさが抜け切らず、ともすれば少女にも見えるようなフェリシアーノは男性陣の間でもアイドルだ。
そのフェリシアーノが自分と同様にまだ少年みの抜けきらないアーサーと連れだっていれば当然注目だってする。
フェリシアーノはそんなざわめきにも慣れたもので、気にせずにカウンターに向かうが、アーサーは極東支部の面々よりかなりオープンな感じの視線に少し戸惑い気味だ。
「あ...あの、フェリ?なんかずいぶん注目浴びてるみたいだけど…」
おそるおそる言うアーサーにフェリシアーノはあっさり言う。
「ああ、気にしないでいいよ。いつものことだから。
食堂に備え付けられたテレビの中の登場人物だとでも思っておけば。
なにしろジャスティスってさ、この世界に12人しかいないし、珍しいんだよ」
「なるほど…」
慣れた手つきでトレーを取り、アーサーにもトレーを渡してくれるフェリシアーノ。
「マグロのカルパッチョとパンプキンスープとフランスパンとシーフードサラダと...カルボナーラとマルゲリータピザ、あとカプチーノとティラミスお願い♪」
次々注文していくフェリシアーノのトレイに乗った料理の量にアーサーは目を丸くする。
この細い体のどこにこんな量が入るのだろうか...。
ちなみにアーサーのトレイにはトマトサラダとトーストとオムレツとウィンナーそれにヨーグルトとミルクティ。
それでもそう少ない量ではないと思うのだが、
「アーサーって...それだけしか食べないの??」
と、アーサーのトレイを覗き込んだフェリシアーノが驚きの声をあげた。
「これ…少ない量じゃなくないか?フェリがすごいだけで…」
と、アーサーは逆にフェリシアーノのトレイに目を向ける。
「そう?ここのご飯美味しいから食べたくなっちゃうんだよね~」
言ってフェリシアーノは食堂を軽く見渡した。
そして
「窓際いこ♪」
と、テラスに出るガラス戸の側の空席に足を向ける。
アーサーはそれに続いて窓際の席にストンと座るフェリシアーノの隣にトレイを置いた。
こうして2人揃って窓際の席に落ち付くと、さらにざわめく食堂内。
「...おいっ...」
「...行ってみるか?」
「早い者勝ちだよなっ!」
フェリシアーノの横にアーサーも腰を下ろした瞬間、食堂のあちこちで一斉に男達が立ち上がって窓際に向かってダッシュする。
「ここ!良いかな?!」
「おい!割り込むなよ!俺が先っ!」
「うるせえっ!あっち行けよ、この席は俺のもんだっ!!」
あっという間にフェリシアーノとアーサーの周りの席の争奪戦が始まった。
いつもはルートと一緒で近寄れなかったブルーアースのアイドルの可愛いフェリシアーノが、彼と同じく愛らしい容姿のジャスティスの少年と食事をしているのだ。
チャンス!と男達が群がっても不思議ではない。
今までいつもルートが必ず側にいたのでフェリシアーノ自身もここまでの騒ぎに遭遇した事はなく、さすがに呆然とする。
本部のノリに慣れていない上に前述のような理由で男があまり得意ではないアーサーに至っては...顔から血の気が引いていた。
(怖い...怖い...怖い)
大きな男達に囲まれてるのも怖ければ、みんなが周りで殺気だっているのも怖い。
呆然と固まる2人。
しかし助けの手はすぐに差し伸べられた。
「あんた達っ!いい加減にしときなさいよっ!!!!」
と、ブン!!!といきなりでかいフライパンが視界をよぎる。
「うああああ~~!!!」
ものすごい悲鳴と共に、二人の後ろに群がっていた男達が吹き飛ばされた。
へ??!!!!
バっと振り返ってみると、何故かフライパンを手に雄々しく立ちはだかる女性。
スタイル抜群の美女。
だが、美しさより凛々しさが前面に滲みでている。
「あ、エリザさん、助かっちゃったよぉ~!!!」
と、パタパタとフェリシアーノが手を振ると、
「フェリちゃん、もう大丈夫よっ。
アーサー君も。
このサファイアのエリザさんが居る限りは馬鹿な真似はさせないからね」
と、力こぶ。
うん…綺麗な形の腕なのに、まげて力を入れれば確かにそこには力こぶ……
アーサーはそっと自分も腕を曲げてみるが、ぺったんこなままのそれにため息をついた。
そんなアーサーを尻目にエリザは今度はビシッと後ろを振り返り、怒鳴りつける。
「そこの護衛2人っ!!!遅いっ!!!何やってんのっ!!!!」
指差す先にはバイルシュミット兄弟。
自分のトレイもルートに持たせ、紅い剣を抜いた状態だったギルベルトが駆け寄ってくると、容赦なくその頭をめがけてフライパンが飛んだ。
うああああーーー!!!!
と青くなるアーサー。
だがギルベルトは慣れた様子でそれをかわし、
「わりっ!でも助かったわ。
ダンケ、エリザ」
と、当たり前に剣をペンダントに戻してアーサーの隣へ。
「次はないわよっ!
今度こんな不手際あったら、護衛役あたしが代わるからねっ!」
と、エリザはアーサーの正面の席についた。
「…タマ、フォロー遅れてごめんな?」
ガタンと椅子を引いて座りながらそう言って少し心配そうな表情で顔を覗き込んでくるギルベルト。
しかしおそらくもう1呼吸エリザのフォローが入るのが遅ければ、昨日の夜のようにアーサーを守るために紅い剣を振りかざしていたのだろうと思うと、むしろ悪い気になる。
それを素直に言ったところで余計に落ち込ませるだけだろうし…と、アーサーはことさら軽い調子で、
「いや、おかげで綺麗で勇敢なレディの華麗なフライパンさばきなんてレアな物が見れたし?」
と笑ってみせると、ギルベルトはそれにはぁ~っとため息をつきながら、
「あのな…それ、レアじゃねえから…。
本部にいたら嫌でもしょっちゅう見る事になる…」
と肩を落とした。
「まあ…色々な意味で男性が苦手なアーサーさんがこうして馴染んでいらっしゃるだけでも、さすが師匠と思いますが…」
と、そこにいつのまにやら桜も参加。
エリザの隣、ギルベルトの正面に当たり前に座ると、
「それに…アーサーさん寝起き悪いから大変でしたでしょう?」
と、ニコリと微笑む。
寝起き……と、そこでギルベルトは思い出した。
そしてアーサーと桜を複雑な表情で見比べると、ピタリ…と桜の笑みが凍りついた。
「…アーサーさん?あなた…まさかまたあれ言ったとか言わないでしょうね?」
という静かな怒りのこもった声に、アーサーはビクリとギルベルトの腕をつかむ。
「いや...すまん。寝ぼけてて...」
アーサーが珍しく神妙な顔で言うのに、ギルベルトは赤くなる。
あれは...やっぱり冗談じゃなかったのかっ。
「なに?なんかあったの?」
3人それぞれの反応に、エリザが身を乗り出してきく。
「誤解しないで下さいね、師匠。
あれは...単に起こされないための嫌がらせなので」
「だから、あれって何?」
さらに聞いてくるエリザに言って良いものかどうか迷うギルベルト。
「あの...本当にするのか?」
赤い顔のままちらっと桜に目をむけて言うギルベルトに桜はブンブンと思い切り首を横に振った。
「しませんっ」
「だから、気になりすぎなんだけど!いったいなにがどうなってるの?」
さきほどからスルーされているエリザがさらにさらにたたみ掛ける。
「確かに...気になるよね...」
それまで黙っていたフェリシアーノまで口を開いた。
「アーサーさんは…すご~~~く寝起きが悪くて、私が朝起こしに行くと必ず『キスしてくれたら起きる』って言うんです」
ハ~っと息をついて桜が言うのに、エリザとフェリシアーノは
「「で...するの??」」
と、声を揃える。
「だから~。できないのわかってるから言うんですっ。
するなら別の台詞考えてますっ!」
桜は赤くなって否定した。
「で、以前ちょっと任務で大勢いる所でうたた寝をした時にやっぱりその台詞言って...翌日すごい事になったんです」
「だから...あれは悪かったってっ」
アーサーがそっぽを向いて言う。
「悪かったじゃすみませんっ。
もう!キスしてくれたらって言うのはアーサーさんの勝手ですけど、その前に私の名前つけるのだけはやめて下さいって言ったじゃないですかっ」
「仕方ないじゃないかっ!こっちは寝ぼけてるんだからっ」
「仕方ないじゃすみませんよっ!それから一週間大変だったんですよ?
ブレインのお姉様方からは嫌がらせの嵐だわ、ライバル心に火がついたストーカーさん達の活動が激化するはで...」
「だからそれは、その後買い物のお供でチャラにしただろうっ!」
「でもまた同じ事してるじゃないですかっ」
延々と続く口論に苦い笑いをもらす面々。
「あー、何か喧嘩してるネ?」
と、そこにトレイを片手に梅まで現れ、エリザが事の次第を説明すると、梅は
「これからは問題ないネ。
ギルが恋人って事にしておけば無問題だヨ」
と、当たり前に言ってストンと桜とは反対側のエリザの隣に座って、いただきますネ~と、手を合わせて中華粥を食べ始めた。
「…!…そうねっ!それがいいわっ!
ギル、そう言う事でね、桜ちゃんの身の安全のためにもあんたこれからアーサー君の恋人ねっ」
実に良い笑顔で言うエリザ。
それ…桜の身の安全とかじゃなくて、お前の趣味だろうよっ!…とは思うものの、さきほどから緊張したままギュッと自分の袖を握り締めているアーサーが可愛くて、別にもうそれでも良いか…と思ったりもする。
「ああ、もうそういうことで、桜もいい加減機嫌直せよ、今度はとりあえずまだ巻き込んでねえだろ」
と、アーサーも桜の機嫌が直ればどうでも良さそうなので、ギルベルトもそこは否定はしないでおくことにした。
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