来ると言ったアーサーが何故か来るのに随分時間がかかっているので、その間にダメになったプチフールの代わりを作ろうと再度試作品作りを始めたアイラの後ろで、その手で器用に飾り付けられるプチフールを前にため息を付くアントーニョ。
チュロスも美味いんやけどなぁ…と呟きながらウロウロ…。
繊細な飾り付け作業をしているので正直少し黙ってて欲しいと思うのは内緒だ。
「ちっちゃなったタマめちゃ可愛いくて、可愛くて…もう可愛すぎやってん。
あれ見て頬ずりくらいはしたなるのは人間として当たり前やん?
親分悪ないと思うんや。なんで逃げられてんやろ?」
タマ…というのはアーサーのことだ。
アントーニョとアーサーは何故かポチ、タマと呼び合っている。
別に馬鹿にしているとか仲が悪いとかではなく、親愛表現らしい。
ジャスティスの考える事は一般人にはよくわからないとアイラは思う。
まあそれはおいておいて…
「嫌だから逃げられたんじゃないですか?」
と、アイラの言葉に棘がまじる。
小さくなったアーサーのために、細工も細かくしているのだ。
ああ、もう黙っててっ!!と、叫び出さないようにするので精一杯だ。
アイラとて普段はアンアサktkrとか叫んでいるのだが、ケーキが関わると話は別だ。
完璧なモノを仕上げたい……そう!アイラはどこまでもプロだった。
「アイラちゃん、冷たいわ~。親分ほんま悩んどるのに…」
ため息を付くアントーニョに、とうとうスルーするのも限界を感じ始める。
アイラは余ったスポンジと幾つかの色合いのクリームの入った絞り出し袋をアントーニョにつきつけた。
「コレあげますからっ!少し黙ってケーキでも作ってて下さいっ!」
ピシっと言われて、アントーニョも、
「はい、すんません」
と、おとなしくそれを受け取って見よう見まねで飾り付けをし始める。
最初はなんとなく始めたケーキ作りも、だんだん楽しくなってきたようだ。
トマト、トマト、トマト~♪♪と、歌いながら、アントーニョは直径3cmくらいの小さな小さな丸いケーキに、極々細い絞り口で小さな小さなトマトの絵を描いていく。
アイラの方は2段重ねのケーキで、クリームが芸術的にまで細かくバラの形に飾られている。
「お~!さすがプロやねぇ」
ぱちぱちと手を叩くアントーニョに、ふぅっと満足のため息をもらすと、アイラは
「アントーニョさんも初めてにしてはお見事です。さ、イヴィルにダメにされる前にしまっちゃいましょ」
と、それをそれぞれ、小さな小さな箱にしまって、仕上げに、と、細いリボンを結ぶ。
こうして二人一仕事終えた気分で和んでいると、
「あ、アントーニョさん、ちょっと話が…」
と、見知った顔が食堂へと入ってきた。
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