青い大地の果てにあるもの8章_7

遠征計画


「正直…きついな、これは。」
出動組が研究室につくと、すでにジャスティス全員が揃っていた。
他にはブレインからローマとロヴィーノ、そしてフリーダムからギルベルトもいる。

「いったいどうしてこういう事になってるん?」
声もなく呆然としていたギルベルトの代わりに口を開いたアントーニョの問いにローマは少し迷って、しかしすぐ
「隠してもしかたないな。」
と息を吐き出した。

「イヴィルは強化人間という事は知られてるよな。
さらに正確に言うと特殊な形の種子を埋め込まれた人間なんだ。
詳しい方法はわからねえが、一部の人間に限られているって事は空気感染とかそういう簡単な方法ではないとは思う。たぶん簡単な手術なのかもしれねえな。
体内に埋め込まれた種子が体中に根ざして触手だったり特殊な形態の手や足だったりになるみたいだ。
もし手術だと仮定するとだ…本人の意に沿わない形でイヴィルにされるという事も起こりうるわけだ。
…その後の敵対行動は暗示なのか脳手術なのか、もしくは種子に浸食された事による破壊衝動なのかはわからないがな。
ただ確実に言える事は誰でもイヴィルになりうるという事だ。」

「この二人はレッドムーンの基地探索中に行方不明になっていた。
この他現在連絡が取れない隊員が5名。
単に連絡が取れない状況にある可能性もなくはないが…捕まってイヴィル化している可能性も高いな…。」
ローマの後を引き継いでギルベルトが秀麗な顔に苦い表情を浮かべながら言う。

「もし…なんだったら後で報告するから、少し別室で休むか?ギル。」
いつになく疲れた表情のギルベルトにロヴィーノが小声で声をかけるが、

「いや、気遣いはありがたいが、大丈夫だ。
一番つらいのはジャスティス達だ。フリーダム本部長が逃げるわけにはいかねえよ。」
と、少し表情を柔らかくしてロヴィーノにやはり小声で答えた。

「そうか。長丁場になるから、お互い無理はしないようにしような。」
とそれにロヴィーノが珍しく柔らかく微笑む。

二人が小声でそんな会話を交わしてる間に、ローマが口を開いた。

「これからはその辺りも踏まえてチームを組んでいかないと駄目だな。
実は今後、敵が来て対応するという守勢から敵の基地に遠征するという攻勢に転じようという計画を進めてんだが…。
まあこうなった以上、元仲間が敵になるわけだから…そのあたりを割り切れる人間だけ外に出す形で。あとは本部の防衛に回すしかねえな。」

うながすように視線をむけられてアントーニョは少し考え込む。

「まあしゃあないな。俺が出るわ。他はタマはええとして…あとはエリザか?
ベルとフェリちゃんは堪忍したって?あの子らはトラウマになりかねんから。」

「本部長、俺も外組で頼む。」
腕組みをして難しい顔で考え込むローマに、ルートが手を挙げる。

「正直…どこまで戦えるかはわからんが、唯一の盾としては今後激しくなっていく戦いのために精神修養は大切だ。」

「おめえがそう言ってくれるのは助かるが……」
と、そこでローマは少し眉を寄せて、珍しく考えこむ。

「結構キツイと思うが…大丈夫か?」

真面目さゆえに無理をしているのではないかと心配したのだが、ルートヴィヒは

「ああ。だからアントーニョとエリザが揃っていてフォローが入るうちに鍛えておきたい。盾役が他にいない以上、俺が崩れたらそれなりに困るだろう?」
と、珍しく笑みでそれに応えた。

無理をしないといけない時に無理しすぎないために…と言われれば上司としても反対する理由はない。

そこで
「ルートが行くなら俺もっ!」
フェリシアーノもあわてて言うが、
「フェリは駄目だ。おめえは感情に流されすぎる。」
とローマに即却下された。

「でもっ!」
さらにフェリシアーノは食い下がるが、普段は孫には甘いローマもそこはきっぱり

「他も動けなくなるお前のフォローしてる余裕はないからな?
それに遠隔のお前の能力は防衛向きだ」
と、却下した。

言われてフェリシアーノはうなだれて黙り込む。

しかしそこで珍しく
「その…お前が本部で待っていてくれると思えば、俺も無事に帰れる気がするのだが…」
と、ルートのフォローが入り、
「ホントに?!じゃあ俺美味しいご飯とかいっぱい作ってルートの帰り待ってるよっ♪」
と、とたんに機嫌を直す。
そちらはそれで解決…と、ローマは今度はもう一人の孫に視線を向けた。

こちらはそろそろ鍛えあげなければならない…良い機会かもしれない…と、内心思いながら、口を開く。

「あとは…敵の方の基地に行くって事はイヴィルの製造についてとかな…戦闘部隊じゃわからねえこともチェックしてこなきゃなんねえからな。本当は爺ちゃんが行きたいとこなんだが、もう年だしな、代わりにロヴィーノ、お前行ってこい」

意外な人選にその場にいた全員が驚くが、

「仕方ねえな。基地で愚痴ってるより実績上げねえとな」

と、近頃なんだかヤル気をだしているらしいロヴィーノ当人はあっさりそれを了承する。

こうして遠征の中心メンバーは決定した。


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