紅い鎖_12

エピローグ


そうして数百年後……

「ちょ、なんで君俺だけ目の敵にするんだいっ?!」
後ろからスペインに膝かっくんをされて見事にバランスを崩して転ぶアメリカ。

「うっさいわっ!自分の嫁に暴言吐かれた男としては親分の対応なんて優しい方やでっ」

そう、現代ではもう堂々と関係を公表できる。

もちろん万が一何か起こったらまた忍べないと困るため、あの頃からずっと秘かに関係を続けていたと言う事は隠し、最近付きあい始めた事にはしているが、とにかく公にできるような時代になったわけだ。

そして今日も会議の議題とは関係ないところで嫁に暴言を吐く若造にしつけの膝かっくんをしてやったわけだが、アメリカは不満げに頬を膨らませる。

「なんだいっ!イギリスがこうるさい事ばかり言うからだろっ!いい加減にしてくれよっ!君は俺のママかいっ?!って言いたくなるのも仕方ないじゃないかっ!!
第一イギリスに色々いうなら、フランスも、香港も、イギリスのお兄さん達もみんな言いたい放題言うじゃないかっ!!
なんで俺にだけなんだよっ!!」

(…まさにそれや。あいつ自分のママやで?)
スペインは心の中でそう言ってため息をつく。

まあ…いまやそれぞれ別の国なので、それを言えば多かれ少なかれあちこちに影響するだろうし、良い事ばかりとは限らないので、二人の秘密にしておくと言うイギリスとの約束なので告げられないわけなのだが…。

鈍感、無神経ゆえの強さという資質は不本意ながら自分にそっくりで、イギリスがアメリカを甘やかすのに苦言を呈するたびにそれを指摘されるスペインはたまったものじゃない。

早くいったん挫折を見て、精神的に成長してくれと切に願っている。
他は良いのだ、他は。
自分の息子だからこそ問題なのだ。


人間達は相変わらず自分が進みたいように進んでいて国体の気持ちなんて対して考えていなさそうだが、それでもそれなら自分達も国政は国政として、自分は自分と開き直れるなんて、良い時代になったものだと思う。

それでもそれが出来ない時代…あの国体の意思など踏みつけで無理矢理に縛りあげてでもイングランドをスペインに送りこんでこられた時代があったからこそ、今があるのだ。

「スペイン、またアメリカに嫌がらせしてたのか。
もう、子どもじゃないんだからいい加減大人げない真似するなよっ!」
と、ぽこぽこ怒る嫁。

(これ、最初は縛られてあんなに怯えとったのになぁ…)
と、思いだすとなんだか笑える。

そして、実際笑うと容赦なく殴られ、でもそんなすっかり気のおけなくなった距離感が愛おしくも嬉しかったりするから困りものだ。

「お前…大丈夫か?殴られて嬉しいなんて、どこか打ちどころが悪かったか、変な趣味に目覚めたのか?」
と、あまり可愛くない事を言いつつ心配そうに顔を覗き込んでくる愛妻に
「なんでもないよ。今日の夕飯、ええ魚貝が入ったから美味いパエージャ作ってやれるなぁ思うたら嬉しくなってん」
と言うと、
「…ホントにお前は…呑気で良いなぁ」
とため息をつかれた。

「呑気でおれる時代、大いに結構やん。呑気やない時代超えて来た身としてはありがたいわ」
と、それでもその言葉にそう言うと、イギリスはちょっと考え込んで、やっぱりそんな時代の事を思い出したのか、
「ああ、そうだな…。
でもそんな時代があったからいまこうして一緒にいるんだしな…」
と、おそらくスペインと同じ事を思いだしていたのだろうか、しみじみと言って、数百年たっても変わらないあの頃と同じように可愛らしい顔で微笑んだ。


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