同級生
「…イヴァン?!なんでお前が…?」
何もない見渡しの良い道路で、双方隠れることの出来ないような場所だ。
車はすぐ見つかった。
フェリシアーノを除く3人が揃って“華麗な俺様と小鳥さん号”から降りると、止まっていた黒いセダンから降りてきた大男。
その人物を見てまず口を開いたのはギルベルトだった。
「何?ギルちゃん知り合いなの?」
ニコニコと笑みを浮かべる大男イヴァンと驚いた顔のギルベルトを見比べてフランシスは少しホッとしたようにそう聞いた。
しかし当のギルベルトは驚きから回復すると、表情を厳しくする。
「知り合いっちゃあ知り合いだな。
ホワイトアースの医師の養成学校で同級だった奴だよ。
いつも俺様と主席争ってた優秀なやつで…」
「当時は結構仲良しだったよね♪」
ギルベルトの言葉を遮ってイヴァンがにこやかにそう言う。
それにフランシスが安堵の息をついた。
「なんだ~。じゃあもしかして助けてくれたんだ?
そうだよね~。誘拐とかさらったとかいう言い方じゃなかったもんね。
お兄さん早とちりしちゃった」
にこやかにそう言うフランシスに、イヴァンはニコっと微笑む。
「そうだねっ。助けたって言えば助けたって言えるのかなぁ。
アーサー君の心臓の手術したの僕だしね♪」
「ええ~?!!」
イヴァンのその言葉にはフランシスだけではなく、ギルベルトも目を丸くした。
「お前…あっちの軍についたんじゃなかったのかよっ?!
今、中立地帯で仕事してんのかっ?!」
「へ?敵軍の人なのっ?!」
と言うフランシスはスルーで、イヴァンはギルベルトに視線を向ける。
「えとね、君と一緒だよ?休暇を利用してのお手伝い。
もちろん、実益も兼ねさせてもらってるけどね?
アーサー君の件とかは…」
「…どういう意味や…」
そこでそれまで無言だったアントーニョが一歩前に出かけて、ギルベルトに止められる。
「あの子に何かしたんか?」
きつくなるアントーニョの視線にもこたえずに、イヴァンは口元だけで微笑む。
「心臓の手術するついでにちょっと細工をね。
あの子の心臓にはちょっと音が拾えて位置がわかる機械が埋めてあるんだ。
その上で手術が終わった時、シーライトからサンルイまでの旅行を薦めてみただけだよ?
僕の受け持った何人かの患者さんには同じ事してる。
一人くらいひっかかるといいな~って。」
「つまり…本人にはそうとわからんように情報を流させとった言うことか?」
「うん。そう言うことだね♪
だからアーサー君が君に迷惑かけるからって基地出たのも早々にわかったし、拾ってみたんだけど…。」
「ようは…俺の情報を得るためいう理由やとしても、あの子助けてくれたんか?」
アントーニョから殺気が消えて、代わりに柔らかい感謝のような表情が浮かんでいる。
それはイヴァンにしてみれば意外な反応だったのかもしれない。
貼りつけたような笑みが消えて紫の瞳が驚きでまんまるになる。
「そんな可愛いモンじゃねえよ。…だろ?イヴァン。」
そこでそんな空気を破るようにギルベルトの緊迫した低い声がそう言葉を紡ぐと、イヴァンはハっと我に返って
「そうだね。」
と笑った。
「なんでもええわ。
俺のとっから持ってきたいもんがあるなら、情報でも金でも何でも持ってってや。
その代わりあの子返したって。」
その二人のやりとりには興味なさげに言うアントーニョに、イヴァンはやはりにこやかに
「もちろん返すよ?元々そのつもりだったし。
とりあえずここに寝かせるから僕が車で離れるまでは動かないでね?
ちゃんと酸素マスクもつけさせてるけど、僕を攻撃したら自動で酸素が止まるようになってるからね?念のため。」
と、道路にコートを脱いで後部座席からアーサーを抱えてくると、その上に寝かせる。
それからイヴァンが車の助手席に乗り込むと車はゆっくりバックをし、それからターンするとそこからは急速に走り去った。
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