そうだ!スパイをしよう!
先日この基地に来てフェリシアーノに連れられて初めて部屋の外へ出た。
そこで図らずとも周りが…正確にはアントーニョとギルベルトとフランシスとフェリシアーノ以外が自分をどう思っているのか知ってしまった。
アントーニョの金や身分が目当てか…もしくはスパイ……。
その時は自分が事実スパイというかアントーニョの命を狙っている敵軍の人間なのにショックで気を失ってしまったわけだが、ここで暮らし始めてそろそろ半月たつわけだし、いい加減覚悟を決めなければならない。
ショックを受けている場合じゃない。
そう、正攻法で倒すのが無理なのだから、なんとか弱みを探り出そうと決めたんじゃないかっ!
さらに…アントーニョの暗殺が成功した際の退路も確保しておかなくてはならない。
最低限、この基地の出口は把握しておこう!
当面の目的をそう決めたが、調べようにも先日外出して倒れた時にアントーニョに外出禁止令を出されたところだ。
何か外出をしなければならない理由を見つけなければならない。
「アーティー、トルティージャ嫌いやった?それともなんか気分悪い?」
美味しそうなふわふわのオムレツを前に難しい顔をしているアーサーの顔をアントーニョは心配そうに覗きこんだ。
「うあっ!」
濃い漆黒のまつげに縁取られた深いグリーンの瞳でジッと覗きこまれ、アーサーは思わず身をのけぞらせた。
「あ~驚かせて堪忍な?でも大丈夫か?」
クソ~!こいつ無駄にカッコイイな。…いや、俺だってカッコイイけどなっ!
などと内心思いながら、赤くなった顔をブンブン横に振る。
「ほんま?なんか顔も赤いで?熱は……」
顔が驚くほど近くなってコツンと額をぶつけられて、アーサーはぷすぷすと頭から湯気を出して硬直した。
「少し…熱いかな?気づかんで堪忍な。少し休もか…消化ええもん作ったるわ」
ヒョイっと抱き上げられてベッドに運ばれ、
「待っといてな」
と、チュッと額にキスされる。
「…クソッ!」
心配されて嬉しいとか優しくされて嬉しいとか思ってなんかないんだからなっ!
パタンとドアがしまった瞬間、ぽつねんと残されたアーサーは額に手を当ててうつむいた。
その後…居候としてはせめて家事くらいはしたいから、掃除道具などを見に行きたいと言って却下され、途方にくれたまま結局アントーニョが作ってきたリゾットを食べてふて寝するまで数十分…。
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