温泉旅行殺人事件_32

「なんか…色々えぐられる事件だったよなぁ…」
帰りの電車の中でコウがつぶやいた。
いつものごとくその横ではコウの肩に頭を預けてフロウがすやすや寝息をたてている。
「まあねぇ…人間関係考えさせられたよ、色々」
ユートも脱力したように肘掛けに肘をついて言った。
アオイもさすがに疲れたらしく珍しくユートにもたれかかって眠っているので起きているのは男二人だけである。

「俺さ…ユートからもらったメール見て、もし姫が俺よりユートが好きとか言い始めたら自分どうするかなぁとか考え込んじゃったんだけどな…」
ため息まじりにいうコウにユートが吹き出した。
「それありえんてっ。ま、俺は逆にコウとアオイが浮気したらどうする?って聞かれたんだけど、雅之さんにっ。で、コウはどうするん?」
「あ~、真っ当にやったら勝てんだろ。ユート人間関係天才的だしなぁ。」
その言葉にさらにユートは吹き出して言う。
「コウが俺に勝てないなんて思ってんのお前だけだってマジ。スペック違い過ぎだしっ」
「いや…絶望的に空気読めないから…。女心マジわからん。」
コウは真顔で断言し、しかしさらに
「でもな、よくよく考えたら恋愛って一人じゃできんからな。ユートは俺が姫好きで、今現在つきあってるって知ってて手ださんから、無問題だなと」
とつけたした。
「あ~俺もそれ思ったっ。」
ユートはクスクス笑う。
「まあ…でもそんなコウが万が一そんな自体を引き起こしたらそれは浮気じゃなくて本気だから泣きながら諦める事になるんだろうなぁと…」
「…お前は俺か?俺も同じ事思ったぞ。」
とコウは額に手をやってため息をついた。

「でもな…それでも一つ言えるのは…俺、それでも姫の事好きでいると思うし、ユートとも親友やってると思う。」
「それ、俺も同じく。」
そして男二人、ちらりと自分の彼女に目を落とした。
「たまたま男女二人ずつだったから男女二組になってるけどな…それでも二組のカップルである前に4人の仲間だよな…」
「うん…まあ四葉のクローバーってことで。」
クスリと笑みをもらす男二人。

凶は…これ以上悪くはならないからあとは好転するだけという考え方もあるらしい。
最悪な自体になりかけて、結局今回もできなかったわけだが…まあ仲間との絆は深まった事だし、次こそは自体が好転するはず…。
次こそは奮発した500円分くらいの良い事は起こしてくれよ、頼むよ、神様…。
変な事に巻き込まれないようにって言う願いはきいてくれなかったんだから、次こそはもう一つの願い事は頼むよ、マジ…。

静かな時間が流れる中、自分の肩に頭を預けてアオイが確かに規則正しい呼吸を繰り返しているのを感じながら、ユートは秘かにそう心の中でお祈りした。


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