「さすがに…そんなに長く入れるもんじゃないねぇ…」
真っ赤な顔で言うアオイ。
一応5;40分までだが、まだ5:30だ。
「ですねぇ。たぶん…寒い場所なのでお湯の温度を少し高めにしてあるんでしょうね。のぼせちゃいます」
フロウも真っ白な肌を少し薄桃色に染めて、アオイの言葉に同意する。
「まあ…でもあんまりのんびりしてると湯冷めするぞ。行こう。」
コウは言ってみんなを促した。
「明日は…コウさんとユートさんも入ってらしたら?海が見えてすっごく気持ちいいですよ~♪」
行きとは別の道を通りながらフロウはニコニコと笑顔で言う。
「うんうん、すっごく景色いいよ~♪」
アオイも言うが、コウはきっぱり
「送迎車出してもらうにしても往復20分弱。
入ってる時間考えたら1時間弱も姫を一人で部屋に残すなんて危ないだろ。
かといって…ついて来られても外で待つのは宿で待つより危ないし。俺は内風呂で充分」
と言い切る。
「コウ…」
「コウさん…」
「コウってば…」
ユートもフロウもアオイも…コウ本人以外の3人はその言葉に苦笑した。
「子供じゃないんですからぁ」
と言うフロウだが
「子供より危ないだろ、姫は」
とコウはさらに言う。
確かに…否定はできない、と、ユートとアオイはそれには無言の賛同を贈った。
そんな話をしながら宿に辿り着く。
「腹減った~。今何時?」
ユートの言葉にコウがチラリと腕時計に目をやって答えた。
「18時13分32秒」
その答えにユートが呆れたように
「あのさ…時報じゃないんだから…秒まで要らんて。ま、夕飯6時半に頼んどいたからあと17分かぁ」
と、お腹をさする。
「食いしん坊だね、ユート」
そんなユートに楽しげに言ったアオイは、
「あ…」
と叫んだ。
「何?」
とユート。
「露天の鍵返し忘れた~。ちょっと返してくるねっ」
と、止める間もなく走り出して行く。
「んじゃ、夕飯はコウ達の部屋だし、もう直接行っちゃうか。」
食事はコウ達の部屋に運んでもらって一緒に食べるように手配してるため、ユートもそのままコウ達の離れに向かう。
「遅いな…アオイ。母屋まで行って帰ってくるだけならいい加減来てもいい頃だよな…」
18時20分を過ぎて仲居さんが食事の支度を始めると、コウはチラリと時計を見て立ち上がった。
「ちょっと見てくる」
と、コウが心配性なのはフロウに対してだけではなく、仲間全般に対してだ。
まあ…去年の大騒ぎを考えると、彼が特別心配性なだけとは言い切れないのだが…。
そしてコウが部屋を出かけた時
「遅れてごめ~ん!」
と、アオイが入って来た。
「迷いでもしてたのか?」
アオイならあり得る…とコウは言うが、アオイはそれは
「ううん、実はね…」
と否定をして、しかし部屋に入って
「うっわ~綺麗♪」
と料理をみて歓声をあげた。
もう…こうやって関心がコロコロ移るのは、周りの女性陣の特徴だ。
コウはそれ以上聞くのはあきらめて、黙って自分の席につく。
「フロウちゃん…何やってるの?」
食事が始まるとおもむろにパシャパシャとデジカメで写真を撮るフロウ。
「あ~気にするな。単に綺麗な飾り付けとかはデジカメで撮って保存して、自分が料理する時の飾り付けの参考にするだけだから」
と、真剣な顔でシャッターを切るフロウの代わりにコウが答える。
その作業が終わるとようやく食事に入るフロウ。
しかしその顔は真剣そのもの。外見を撮り終わると今度は匂い、味を調べてるらしい。
「フロウちゃんてさ…いつもこうなの?」
パクパクと料理を頬張りながら聞くアオイにコウは苦笑してうなづく。
「姫だけじゃなくて優香さんもそうだぞ。ここん家の女は料理に命かけてるから。味覚はもちろん、嗅覚もすごい。」
そんな事を話しているうちにようやくチェックが終わったらしい。
いつものぽわわ~んとした表情に戻って楽しそうに食事を始めるフロウ。
まあ食べられる量は少ないので、半分くらいはユートとコウの胃袋に収まったわけではあるが…。
そのかわり時折
「これ好き~♪」
と言うと、コウが自分の分をやってたりするのが微笑ましい。
まあ…それはたいていコウが食べられない甘い物だったりするわけだが…。
そんななごやかな夕食がすむと、気持ちは花火へ。
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