14時にベッドに入って時計に目をやるともう18時だった。
起きてまずしたのは、腕の中のアーサーの確認。
気持ちよさそうに腕の中で眠っているその寝顔は可愛くて、胸が高鳴る。
急いででないとならない内線で起きたのは、そういう意味では幸いだった。
すぐ注意がそちらにむけられる。
「はい、カリエドです」
内線を取ると
「お休み中でしたか?申し訳ありません」
と和田の声。
「いえ、何か進展がありましたか?」
完全に目も覚めたアントーニョが聞くと、和田が
「はい、犯人から身代金の受け渡しについての連絡が入りましたので、母屋までご足労願えますか?」
と言うので、アントーニョは電話を切り、洋服に着替えてアーサーを起こした。
母屋に行くと各宿泊客が母屋の広間目指して集まっている。
殺人事件があったので、従業員でも暗くなってから離れのあたりを何度も料理を運ぶためにうろつくのは色々な意味でよろしくないということで、宿泊客は夕飯は母屋の広間で取る様になっているためだ。
OL3人組、老夫婦、氷川夫妻がそれぞれ並んですれ違った時、アーサーがふいに立ち止まって首をかしげる。
「どないしたん?あーちゃん」
アントーニョは遠ざかる3組の宿泊客とアーサーを交互に見て、アーサーに声をかけた。
アントーニョの声は考え込むアーサーには届いてないらしい。
そのまま無言で首をひねるアーサーに
「あーちゃん?」
と、アントーニョが声をかけて少しかがんでその顔を覗き込むと、アーサーは初めて気がついたらしい。
「いや、なんでもない。行こう。」
と、言って、アントーニョの腕を取った。
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