「大変ですっ!!!」
各部屋を念のためにと確認しにいった従業員が顔面蒼白で戻って来た。
「小澤様が殺されてますっ!!」
再度フロントがその旨を警察に連絡して、花火を見物していた宿泊客も安全のため母屋へと集合させられた。
やがて警察が到着。
従業員が事情を説明している。
宿泊客が殺された?それとフラン達がいなくなったのと何か関係があったら…変な物を目撃してたとしたら…
とりあえず従業員から事情を聞き終わると、事件の関連性もあるかもということでフランとギルの事についてアントーニョとアーサーも事情を聞かれる事になった。
アーサーが主にいなくなった時の状況とペンダントの事を説明する。
その後…宿についてから遺体が発見された8時40分までのアリバイを聞かれた。
正直…もうそんな物はどうでも良かった。
死んだものは生き返るわけじゃないっ!先にフラン達を探してくれと喉まで出かかって、飲み込む。
とりあえず…いったん取り調べに使っている部屋から出されて、ロビーへ。
そこに集合している他の宿泊客のざわめきがなんだか気に触る。
「アーサー…大丈夫か?」
心配するアントーニョの声に泣きそうになる。
頭に血がのぼって冷静に頭が働かない。
これだけ殺人事件にばかり巻き込まれていると、絶対に大丈夫なんて思えなかった。
もし自分が草履をはきかえになんて行かなかったら…と、後悔の念がつのる。
もし…事件に巻き込まれてさらわれたとしたら…生かされている可能性は極めて低くなる…
そう考えた途端強烈な吐き気と息苦しさにみまわれる。
「カークランドさん、ちょっとお聞きしたい事があるので、もう一度いらして頂けますか?」
ふいにまた警察官がアーサーを呼びに来た。
「俺も…一緒じゃあかん?」
血の気が失せて真っ青で今にも倒れそうなアーサーを心配してアントーニョが聞くが、
「申し訳ありませんが…」
と、倒れそうなアーサーを抱える様にして警察官が中へと連れて行った。
「何度も申し訳ありません、おかけ下さい」
言われてアーサーは椅子にかける。
「行方不明の二人は…みつかりましたか?」
震える声で聞くアーサーに、捜査官は
「残念ながらまだ…。しかしかなりの人数を動員して現在捜索中です」
と首を横に振った。
「そう…ですか」
もうそれでここで何を話しても仕方ない気になるアーサーだったが、向こうはそうではない。
当たり前だが本題に入ってくる。
「カークランドさんは19:30前、お互い忘れ物をしたボヌフォアさんと一緒に露天風呂に忘れ物を取りに行かれたという事ですが…その際、ボヌフォアさんはご自身の忘れ物の他に何か拾われたとかそういう話はなさってませんでしたか?」
捜査官の質問にアーサーはその時のやりとりを思い出すが、フランが何か言っていたという記憶はない。
しかしそれがまさか今フラン達がさらわれたのと関係するのだろうか?
「それが…彼らが行方不明になったのと何か関係しているんですか?」
答えてくれないだろうな…と思いつつ聞いてみると、やはり
「申し訳ありませんが、捜査上の情報に関してはお答えする事ができません」
と、返される。
まあ…どちらにしても”何かみつけた”ならとにかく”何もみつけてない”わけだから事態は変わらないだろう。
「いえ、少なくとも俺は何も聞いてません。」
「何か見覚えのない物を手にしてたとか言う事もないですか?」
「いえ、気づきませんでした。」
「そうですか、ありがとうございました」
言って捜査員は立ち上がってお辞儀をする。
そんな感じで全員入れ替わり立ち代わり事情聴取を受け、一通り終わったのは朝の2時。
「一応今晩はもう部屋に戻って頂いて結構です」
と、言う事で二人は離れに戻った。
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