プロローグ
「ねえ…ギル。何故ここで世界は終わりなの?」
そう言う小さな子どもの手を引いて、世界の果てのあたりにまで散歩に来た銀色の髪の少年が一見何もない空間に手を当てると、そこから先は固く、透明な何かが手が先に進むのを拒む。
「この先では人は生きていけねえから…かな。」
「なんで?向こうには緑も動物も見えるのに…」
子どもの言う通り、決して進むことのできない壁の向こうには、綺麗な森が広がり、鳥がさえずっている。
美しい世界…。
しかし世界はここで終わっている。
「この先には人間を憎んで呪いをかけた魔王がいるんだと。
で、人間が一歩足を踏み入れたが最後、殺しちまう。
だから昔のエライ人が間違って誰かが魔王の土地に迷い込まないように、この壁を作ったんだ。」
ギルはそう言うと、子どもの手をぎゅっと握ってうながした。
壁の中の世界は広い広い土地に広がる畑。
空は青く雲は白い。
人々は土を耕し家畜を飼うことで食べ物を得て、泉の水を飲んで乾きを癒す。
のどかな風景…。
しかし、数百年前、4つの国々があったと言われる世界のうち、人が生きられるのは昔北の国と呼ばれていたこの地域だけ。
国境沿いには大厄災が起こった時に張られた結界が未だ呪われた外界からこの土地を守っている。
限られた小さな世界…。
世界は数百年前から呪われている。
0 件のコメント :
コメントを投稿