以前は紅茶のカップだけだったはずが、最近ギルベルトは朝食のトレイを手に起こしにくる。
そして少しでも体力を使わないように…と、自分が食べさせるのだ。
アーサーが肺炎で入院して退院してからすでに3日がたとうとしているが、相も変わらずこの調子だ。
病院でアーサーが今までロクな食生活をしてこなかったせいで病気に対する抵抗力や体力が著しくないのだと言われたのが原因らしい。
しかし、しかしだ、もう治ったから退院したのだ。
別に病人ではないのだから普通に過ごして問題はない。
アーサーだってオーディションで選ばれてギルベルトと暮らすまでは、普通に毎日バイトをして暮らしていたのだ。
そう主張しても、ギルベルトにアーサーの大丈夫は信用できないと却下された。
――ちゃんと寝てるから大丈夫って言われて目を離したら死にかけられた時の俺様がどんな気持ちだったかアルトにわかるかっ
と涙目で訴えられると何も言えない。
まあとにかくアーサーは未だにあのマンションでギルと暮らしている。
なんというか…撮影の期間限定ではなかったらしい。
――俺様ちゃんと好きだって言ったじゃねえかっ!
と訴えるギルベルト。
いつ?と問えば夏に別荘で…と返ってきて、ああ、あれは演技の練習だと思ったんだ…と答えたらがっくりと膝をつかれた。
あー…まあ、それについては悪かった…と思う。
思うから…少しだけ素直に……
「仕事絡みの期間限定じゃないなら……」
「…ん?」
「気持ちが追いつくように精いっぱい甘やかしてもらう……っていうことで?」
「っ!!ja!!!!」
気持ちなんてとっくに追い越して追いぬいているのだけれど…それを伝えても大丈夫だという自信を持てるように……
そう思って口にした提案を、いつでもどこでも誰がいても、クールキャラなどどこへやら、お姫様に仕える騎士のごとくきっちりきっかりお守りされることになったアーサーが後悔する事になるのは、そう遠いことではない。
もっともそれがギルベルトにとっても新たに強力なファン層の心を鷲掴みにするきっかけになったのだから、世の中わからないものである。
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