Scabiosa-私は全てを失った_2

組み合わせ


「マジか…この組み合わせ!!」

中央から魔法で送られて来たクジ。
それは戦争の代わりに50年に一度行われる、東西南北の4国の中央エリア帯の50年間の所有権をかけた行事の組み合わせを決めるためのクジである。

この中央エリア帯は肥沃な土地で、4国それぞれが所有権を主張していたが、もちろんどの国も譲らず、戦争になって多数の死者を出したことも数えきれない。

しかし何度もそんな事をしていては各国共に疲弊して、あまりありがたくない状況に陥る。

ということで、数百年前の、比較的お互いの関係が良かったとある時代の王が集い話し合って、戦争に代わる方法を決めた。

中央エリアのさらに中央にある神山の頂上へ次代の跡取りを登らせ、1番早く着いた者の国が50年の間中央エリアの所有権を手に入れるという取り決めをしたのだ。

もちろん行事の最中はチェックポイントにいる各国代表の各5人計20名以外は神山への立ち入りを禁止されている。
が、麓のあたりは範囲も広く、魔法を持ってしても人の出入りをチェックすることが難しい。

そのため、跡取りたちは中腹のチェックポイントまではランダムにクジで決めた二人一組の組み合わせで登ってチェックを受け、その後は各自単体で競う。

二人一組にしておけば不意をつかれて揃って即死をしない限り、不正ありの報告を手元の魔法弾で送れるからである。


こうして行事の1週間前に組む相手を決めるクジを引かされるわけだが、4国中3国の跡取りから今回のクジの結果について驚きの声が漏れた。





北の兄弟


「どうしたんだ、兄さん?」
北の国ではクジの結果を知った跡取りギルベルトの叫び声に、弟であるルートが駆け寄ってきた。

そのルートにギルベルトは黙ってクジの結果を見せる。

「これは……」
ルートもその結果に一瞬驚くが、すぐ兄をみやって
「しかし、我が国としては仲の悪い2国が足を引っ張り合ってくれれば都合が良いのではないか?」
と言う。

が、兄が
「理屈としてはそうなんだけどな…」
と渋い顔をしたのを見て、即
「そうだな、すまない。こんな他人の足を引っ張るような考え方、王者としてふさわしくないな。」
と、ショボンと頭を垂れた。

そんな弟をギルベルトは小さく笑って
「そういうんじゃねえよ。そういう意味じゃねえ。」
と、その頭をグリグリ撫で回す。

「国なんて結果が全てだ。そういう意味なら俺様だってそう思うぜ?
ただな…今回なんつーか、嫌な予感がすんだよ。
ひどくヤバイことが起こる…そんな予感がな…。」

「兄さん……」

魔力の高いギルベルトは様々な事象を感じ取る能力に長けている。
その兄がそういうからには何かあるのかもしれない…

不安を覚えるまだ幼い弟に気づいて、ギルベルトはその前に屈みこんで視線を合わせた。

「いいか、ルッツ。俺様はこの国を守るために外で全力を尽くしてくる。
俺様がいない間はこの国はお前が全力で守るんだ。
そうすればこの国が死ぬことはない。絶対だ。」
「Ja!もちろんだ。」

幼い兄弟で交わされた約束…それはこの先非常時が起きても固く守られ、そのおかげでこの北の国は唯一“死なない国”になるが、この時まだ兄弟はその事を知らない。



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