ユートはすぐ来た。
すぐ後ろにはアオイもいる。
ああ、ユートに縁を切られるということは…アオイにもか。
コウは軽く目をつむった。
「どうした?気分でも悪い?」
心配するユートの声に一瞬躊躇するが、コウは大きく息をすって、吐き出した。
「ユート、すまん!」
そのまま頭を下げる。
「ちょ、コウ、なんだよ、いきなり」
戸惑うユートにコウは頭をさげたまま言った。
「俺はこれからお前の大事な人間関係壊しに行く事になる。全部俺の責任だから。お前はただ人選ミスしただけで、責は全部俺にあるからっ」
さすがに…これまで3回も殺人事件を越えて来ていると、それだけでわかったらしい。
「もしかして…真由?」
ユートは意外に静かな声で聞いた。
「だけじゃ無理だから…拓郎さんもか。つか、頭あげてよ、コウ」
言ってユートは苦笑すると軽くコウの肩を押して頭をあげさせる。
「証拠集めに使えないくらい俺そんなに信用できなかった?」
「いや…」
ユートの言葉をあわてて否定しようとするコウにまたユートは少し笑ってうつむく。
「冗談だって。
どうせさ、コウの事だから俺も事情知ってて一緒に証拠集めに回ったら俺まで巻き込むとか思ったんだろ。
巻き込まれてんのコウの方なのに、相変わらず馬鹿みたいなお人好しだな。」
そして小さく息を吐き出すと
「あ~あ、また由衣にいぢめられるな、こりゃ。」
と肩をすくめた。
「ま、またクラス替えあるしね。同じクラスになってもあと1年だ。
でも俺らは4人、あと何十年か…それこそじっちゃんばっちゃんになるまで一緒なわけだし…。
ま、大丈夫。女の子はアオイいるしね~」
ユートは少しおどけてアオイを抱きしめると少し屈むようにしてその肩に額をおしつけた。
触れたアオイの肩を涙が濡らす。
「アオイもさ…俺の周りに女友達一切いなくなったら俺の事独り占めしてくれる?」
それでもおどけた口調を崩さないユートに、ちょっと神妙な顔をしていたアオイは
「のぞむところだよっ。なんなら今からでもいいよ」
と、少し笑みを浮かべてその頭を抱え込んだ。
明かしにくい真実でも知ってしまったからには明らかにする…そう決意して、コウとユートはアオイと湯沢と共にそのまま下に降りて行った。
硬い表情のコウ以上に硬い表情のユート。
その手をアオイがしっかり握ってる。
唯一湯沢だけが飄々とした能天気な様子で、リビングへと足を踏み入れた。
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