コウは遺体の側に膝をついて言うが、
「じょ、冗談じゃねぇ!!犯人いたらどうすんだよっ!!!」
と、3人とも固まって叫ぶ。
「…怪しい奴いたらのしてやるんじゃなかったのか?」
丁度手袋をしたままの手で遺体を少し調べながら言うコウに
「お前ぜってえおかしいぞ!この状況で平気でそれって!!お前やったんじゃねえだろうなっ!!」
と、3人がさらに叫ぶが、コウはそれにも淡々と答えた。
「…跳ね橋上がるまでは確かにこいつも俺も室内にいて、跳ね橋がかけられてからお前らと一緒に出て来てんのに、どうやったらそんな時間あるんだ?
まあ平気じゃないんだがそれでも去年の夏に血のついたナイフ振りかざした殺人犯に遭遇してからは大抵の事には驚かなくなったな。
普通に考えたら俺らが本土からこの離島まで2時間かけてついたってことは警察がつくまでそのくらいかかるって事だろ。それまでに何か起きないって保証はないわけだから…現状把握はするに限る。
お前らも男なら手伝え」
「は…犯人は島の外からやってきて木村殺したんすか?まだこの辺に潜んでるとかなんすか?」
他から一歩離れて湯沢がコウに歩み寄る。
いきなり敬語…。
どうやらこの殺人が起こっている現状で安全な立場でいるには、この妙に冷静な武道の達人に守ってもらうのが一番と判断したらしい。
「今の時点ではわからん…状況的には内部の人間が跳ね橋が上がった状態で殺しに出るのは難しいが、動機的にはないだろ、外部の人間がいきなりって。金もなさそうだし、要人でもないんだから。」
一通り気になるあたりはチェックしたらしい。
コウは立ち上がってビニールの手袋を外すと、
「行くぞ」
と、男3名を宿の玄関の方へとうながした。
死体を発見後コウと空手部3人が戻ると
「碓井君…本当なのか?殺人て…」
と拓郎は玄関のところで出迎える。
「はい。丁度手袋持参してたので調べましたが…遺体の状況からおそらく死後10時間前後ってとこですね。
今が9時だから…犯行推定時刻は昨夜11時から今朝1時くらいですか」
当たり前に答えるコウに拓郎を含む、アオイとユートをのぞいた全員が唖然とした。
「ちょ…ちょっと待ってくれ、碓井君。君は一体何者なんだ?!」
まあ…当然の疑問ではある。
「あ~…」
コウはその質問にちょっと困って、どうしよう?と問いかけるようにユートに視線を送った。
ユートがちょっと息をついて、
「とりあえず…話せば長くなるんで、中で落ち着いて話したいんですけど、」
と、驚く一同に言った後、一旦言葉を切ってコウに
「その前に…何か至急しておかないとなことある?」
と逆に聞き返した。
その言葉にコウはちょっと空をみあげた。
「あ、そうだな。雨振りそうだし現場保存したいんで大きなビニールシートかなにかあればありがたい。あとそれが風で飛ばないような重石になるような物も」
「ということで…用意できる?真由。こういう時はコウの言う事聞いておいた方がいいから。」
と、ユートが言うと、
「ああ、大きなレジャーシートでいいかな?重石は大きめの缶詰で。とってこよう。」
と、拓郎が奥へと駆け出して行った。
そしてすぐ青いビニールのレジャーシートと缶詰の入った箱を取ってもどってくる。
「じゃ、そういうことで空手部、手伝え」
というコウの言葉に大人しく従う男3人。
この状況だ。命は惜しいらしい。
こうしていったん遺体周りをビニールシートで保護して戻ってくる4人。
その4人が中に入ると不用心だから、と、拓郎は跳ね橋をまた上げた。
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