コウとユートとぴったりくっついて歩く女4人。
空手部3人はそれを面白くなさそうにたまにチラ見をしながらも、3人がかりでも勝てないのは昨日実証済みなので、しかたなしにちゃっちゃと歩を進める。
「ああ、そこが倉庫だな。ちょっと悪い。」
海へと続く水路にかかる細い橋の手前にある、昨日拓郎が行っていた釣り具、浮き輪、その他がある倉庫をにかけよると、コウは内ポケットから薄いビニール製の手袋を取り出して付けた。
「おい…なんでそんなもん持ってるんだよ…」
あきれるユートにコウはきっぱり
「ここんとこロクな事なかったから、トラブル起こった時用に念のため持参した。これまでと違って元々トラブル起こる前提の旅行って感じの話だったしな」
と、もうありえないほどの心配性の彼らしい返答を返す。
コウはそのまま倉庫のドアを開け、中身を確認する。
浮き輪が3本、パラソルが1本、大量の釣り竿と…魚篭もある。
まあ昨日拓郎が言ってた通りな感じで特に怪しい物はない…いや、怪しくない物もない?
「朝倉さん、確認したいんだが…」
コウは後ろに立つ真由を振り返った。
「なに?」
真由は言って一歩前に出る。
「いや…対した事ないと言えばないんだが…昨日拓郎さんの話だとゴムボートもあるって言ってた記憶が…。今ここにないんだが、別の場所にうつしたとか?」
「え?そんなはずないんだけど…。」
コウの言葉に真由も倉庫を覗き込んで
「あら、ない。あとで伯父さんに聞いておくね」
と、首を傾げた。
「他に…無くなってる物は?」
さらに聞くコウの言葉には
「ん~、ないと思うわ」
と真由は首を横に振った。
「今度は探偵ごっこかよっ、ちゃっちゃと行こうぜ!」
少し離れてそれを眺めていた空手部3人組は馬鹿にした様に鼻をならすと、先に歩き始める。
「なによ~。元々アオイちゃんが見た怪しい物探すって主旨なんだから色々調べるのは当たり前でしょ~!」
女性陣がそれに向かって舌を出して言うのに苦笑すると、
「悪い、行こう」
と、コウは倉庫を閉めて、みんなを先にうながした。
水路にかかっている橋を渡り、さらに宿の裏側を目指してすすむと、サラサラと雪の様に桜吹雪がふってくる。
「うあ~綺麗ね~。お昼はお弁当もって裏でお花見でもいいかも♪」
女子ははしゃぐ。
可愛いミニチュアの城に満開の花吹雪…。
ああ、フロウも連れてきたかったな…とため息をつくコウ。
というか…春休み後半でも二人で来てしまおうか…などと風に舞う桜吹雪を見上げた。
と、その瞬間。
「うあああ~~~!!!!」
先を行っていた空手部3名が慌てふためきながら逃げ惑っている。
その様子に女4人はお互い寄り添って不安げに抱き合った。
「どうした?!」
かけよるコウに男3人はブルブル震える手で一際大きな桜の木を指差す。
「桜の木が何か?…!!」
薄桃色の花びらが降り注ぐ中…魚と共に漁網に包まれ白目を剥いた男の遺体。木村剛だ。
コウは即脈を取るがすでに事切れている。
「おい、ユート、女性陣連れて宿に戻って拓郎さんに伝えろ!木村剛が死んでる。警察に連絡!」
「剛っ?!!」
走りよりかける真由の腕をユートがあわててつかむと、他3人の女性陣も一斉に止める。
「放してぇ~!!!」
叫ぶ真由を4人はそのままひきずるように連れて行った。
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